Vol.3

スマートな家づくり 理想の家は依頼先選びからはじまる

@千葉県市川市 Tさん邸

家づくりとは「自分が、家族が、どう生きたいか、
どう暮らしていきたいか」に向き合う作業

FP(ファイナンシャルプランナー)に相談して予算を組み、土地探しから始め、都心から近い千葉県市川市に建てたTさん邸。
設計施工はSE構法での実績が数多くあり、上質なインテリア提案にも定評がある千葉の工務店TIMBER YARDに依頼。
DJブースを中心とし、家族それぞれが自由な時間を過ごす心地いいLDKが実現しました。

Text:間庭典子/Photo:横山順子

光熱費のかかる古い一軒家の賃貸から新築へ
最初の一歩はFPへ相談することでした

千葉県市川市のTさん邸は、陽当りのいい2階LDKのリビングにDJブースを備えたユニークなプラン。ダイニング側の壁面にはデスクを造作し、家族それぞれが、自由に過ごせる空間となっています。以前は都内の賃貸一軒家に住んでいたそうですが、1年以内に引っ越さなくてはならない状況となり、住み替えが必要に。

2階がせり出すオーバーハングなどSE構法ならではの設計で、限られた空間を有効活用。

「長女の就学前だったので、このタイミングで新築を検討しようということになりました」と夫の佑輔さん。「住んでいたのが築40年超になる古い一軒家だったので、とにかく光熱費がかかったことも悩みの種でした」と妻の千英さんは語ります。家づくりを進めるにあたって、まずはFP(ファイナンシャルプランナー)へ相談に行きました。「保険に加入したときからおつきあいのあるFPさんでしたが、将来、かかるであろう学費やリタイア後に備えたい金額まで、具体的な試算をしてもらいました」とふたりは振り返ります。この資産状況ならば無理なく建てられる総額はこうで、ローンはこう組んで…と具体的な「作戦」を練ってもらうことで予算が決まり、土地探しから始めることに。 「都内も検討したのですが、子供たちが遊びまわれるスペースを確保するとなると予算的に難しく、エリアを広げて決めたのがこの地でした」と佑輔さん。市川市は都心にも近く、佑輔さんの勤め先とのアクセスも良好。優秀な学校の多い文教地区でもあります。

壁面に造作したカウンターデスクで遊び、宿題もし、ダイニングは子供たちが集う空間に。

服の量からCDの数まで、すべてを
エクセル表に落とし込み、収納計画を作成

広告業界で活躍される千英さんは仕事を通じてSE構法についての知見がありました。「イベントや広告制作の仕事で関わるうちに、構造計算やデータに基づく耐震性について学び、家を建てるならSE構法にしようと決めていました」と千英さん。「1995年の阪神・淡路大震災を機に考案されたSE構法は、その後の新潟中越地震、東日本大震災、熊本地震、今年の能登半島地震を通じて、まだ一棟も倒壊していないんですよね」と千英さんはSE構法の利点を語ってくれました。そうしてエリアの特性にも詳しく総合的な提案力を持つ工務店「TIMBER YARD」に依頼を決定。

木造SE構法での家づくりを振り返るおふたり。役割分担も明確で、絶妙なチームワーク。

音楽が共通の趣味であるおふたりがリビングに欲しいと願ったのは、本格的なDJブース。ターンテーブルと膨大なレコードやCDを収納する棚はマストでした。「今まではIKEAの棚に収納していたのですが、重さを支え切れず、たわんでしまっていました」と佑輔さん。かつての家で収納の重要さを痛感していたため、持っているCDから衣類、お皿の数まで、システムエンジニアとして働く佑輔さんが細かくリストアップ。「エクセル表に落とし込んで、それに合う収納計画を検討してもらいました」と佑輔さん。「収納スペースが多ければいいというものではなく、適切な収納の位置やスペースが、住みやすさにつながるのだと思います」と千英さんもライフスタイルに合った収納スペースに満足そう。CDを納める棚は、佑輔さんの身長に合わせ、手が伸ばしやすい高さ、幅に設計されています。

みんなが集まるLDKの重要な要素となるのが音楽を楽しむDJブース。CDを収納する棚も造作。

実在する2つの住まいを軸に
自由に設計してもらいました

ニーズに合った造作家具は、家具の販売やインテリアコーディネイトも手掛けるTIMBER YARDの真骨頂。キッチンはもちろん、ファミリークローゼットや自宅で作業する時間の多い千英さんのワークスペースも、ライフスタイルに合わせて設計しました。

家で作業する時間が多い千英さんの書斎。棚は造作家具が得意なTIMBER YARDに依頼。

「生活動線を第一に優先しています。お話を聞くうちに、当初、浴室前に設置する予定だった洗濯機も、ファミリークローゼットに近い1階のほうが暮らしやすいだろうと判断し、階段下に設置することにしました」とTIMBER YARDの設計担当の髙石幸子さんは語ります。

生活動線を第一に考え、クローゼットに近い1階階段下に洗濯機を置くスペースを配置。

内装に関しては2軒の邸宅をお手本にしたそう。「陶芸家の鹿児島睦さんのアトリエ兼住まいと、日本で最初の女性建築家と言われる浜口ミホさん設計の『津田山の家』です。SNSなどの情報は膨大過ぎて、あまり見ると混乱しそうだったので、この2軒をリファレンスとして、設計してもらいました」と千英さん。白い壁とフローリングや壁面のタイルをアクセントとした水回りなどはこの2軒の住宅を参考に、トーンを合わせています。プロを信頼し、任せたからこその違和感のないトータルコーディネイトとなりました。「階段のスチール手すりは『津田山の家』の手すりのデザインを踏襲してもらいました。リビングの壁面に貼られたタイルも取り入れたかったのですが、同じ製品はもう生産されていなく、風合いが似たものを探しました」と千英さん。そのものをコピーするのではなく、その空気感を生かし、調和させることで、独自のデザインに仕上がりました。

理想とする邸宅と同じタイプの手すりやタイルなど、注文住宅ならではの自由さで設計。

エネカリ導入で、光熱費は以前の3分の1以下に。
快適でスマートな暮らしにシフトできました

光熱費を賢く節約するために、当時スタートしたばかりだったTEPCOホームテック「エネカリ」での太陽光発電や蓄電池などの設備、サービスを導入。「光熱費は古い一軒家のときの光熱費の3分の1以下になりました」と千英さん。太陽光発電は初期費用に100万円以上かかることがネックとなりますが、エネカリでは月々定額の利用料のみで初期費用は無料。風水害や落雷などの自然災害補償もつき、利用期間満了後には省エネ設備は無料譲渡されるため、気軽に始動できます。「最新の断熱材との相乗効果で、常に室内環境を快適に保てるんですよ」と千英さんも納得の表情です。光熱費の値上げが話題になる今、絶妙なタイミングでスマートな暮らしへとシフトできました。

ち密な断熱計算や「エネカリ」の導入で、光熱費の大幅なカットに成功。快適な室内環境に。

「FPさんに我が家に見合った予算を提示してもらいましたが、私たちはそれより少しオーバーした総額で、背伸びしました」と千英さんは語ります。「当初、中古や建て売り住宅も考えたのですが、どこか既視感があり、そのときの流行を思わせるデザインでした。これはいやだな、というものを目に入れながら暮らしたくない。この家はすべての空間が好きな眺めです」。FPや工務店など、プロの意見を取り入れることで、スマートな家づくりが実現しました。「家づくりとは自分や家族がどう生きたいか、どういう気持ちで日々生活していきたいかというテーマに向き合うことだと実感しています」と千英さんは語ります。

T邸 データ

家族構成
夫婦、子ども2人、
ウーパールーパー
敷地面積
115.34㎡
延床面積
96.06㎡
階数
2階建て
設計、施工
TIMBER YARD