Vol.2

スマートな家づくり 理想の家は依頼先選びからはじまる

@和歌山県和歌山市 Oさん邸

木に包まれた「陽だまりの家」
一年中快適な室内環境で子育てを楽しむ

Oさん邸は部屋のどこにいても明るく、無垢材のぬくもりを感じる陽だまりの家。
テラスや庭へとリンクしたLDKは開放的で、吹抜けがさらなるのびやかさを演出しています。
そしてこの安心感はデータに基づく耐震性を誇るSE構法だからこそ。
そこへとたどり着いた家づくりについてお聞きしました。

Text:間庭典子/Photo:伊藤 信

家づくりの第一の条件は家族を守る耐震性。
『耐震』を検索することからスタートしました

和歌山市内の病院に勤務するOさんと看護師の奥様はコロナ禍をきっかけに家を新築することを決意。
「いつかは家を建てたいと思っていたのですが、あの時期は自宅で過ごす時間が増え、二人で話す時間も増えたので、これは家づくりの絶好の機会だと考えました」と夫の一輝さん。そこで第一に考えたのは、災害に負けない耐震性でした。「耐震住宅」「地震に強い家」などで検索して耐震性の強い構造について、一輝さんは幅広くリサーチしました。
それと並行して、当時住んでいた兵庫県での土地探しも進めたものの難航。そんなときに一輝さんのご両親から、実家の敷地内に建ててはどうかという提案がありました。
「この敷地は母の家庭菜園用で、住宅が建って日当たりが悪くなっては困る、と広めに土地を購入していたのです」と一輝さん。裏はご実家と菜園という環境で、和歌山市に家を建てることになりました。
「候補となった耐震構造のひとつがSE構法だったので、和歌山県でSE構法の住宅を手掛けているところを調べ、浅井良工務店の家づくり相談会「家カフェ」に行ってみることにしました」と当時を振り返ります。「その日は完成内覧会も開催されており、営業や設計担当のスタッフが皆イベント対応中だったため、社長自らが構造の強靭さについて、家づくりの流れについて解説してくれました」
中口勝之社長は「家は最短でも50年スパンで考えてほしい。我々はもし50年後にその住み手が住んでいなくても、譲渡や売却したとしても、永く住み継げる家づくりに取り組んでいるからです」と語ります。

開放的なOさん邸の外観。完全クローズに囲うのではなく、一枚の壁をパーテーションのような目隠しとして、外からの視線を遮断している。

数多くの耐震に優れた構造の中で
SE構法にはデメリットがみあたりませんでした

大手ハウスメーカーではいつまでに決めれば何%割引など、数字で条件を提示され、決断を迫られる対応が多かった中、中口社長がいい家とは何かを淡々と語っていたことに好感をもったのだそう。「木造の耐震構造は他にもあったのですが、妙なでっぱりが生じたり、金具を過剰に使用していたり、なにかしら不都合がありました。それらと比較すると、SE構法にはデメリットがみつからなかった」と一輝さん。命を預かる医療従事者として、正確なデータに基づく判断は、安心安全を貫くためには不可欠。家づくりも同様で、構造計算によるデータに裏付けられる強度は信頼できるものだったのでしょう。
「浅井良工務店のスタッフの毅然とした態度も印象的でした。こうしたい、と伝えてもすべてYESというわけではなく『ここはそうするとこのようになる可能性があるから変えないほうがいいです』など諭されることもありました」と妻の亜裕美さん。住み手の立場に立った対応で、その後のプランニングもスムーズに進行。
取材時にはちょうどメンテナンスが入っていたのですが、まるで親戚が訪れたかのような和やかな雰囲気に。竣工後も、家を守るチームの一員のように顔見知りのスタッフがサポートするのも、小規模の工務店との家づくりのメリットかもしれません。

軒下の幅をとることで、夏は陽ざしをカットし、冬はできるだけ多くの太陽の熱を室内に取りこめるように設計。

実家の冬の寒さが記憶にあったので
1年中、快適な室内環境も条件でした

家を建てるにあたって欠かせなかったもうひとつの条件が、四季を通じて快適な室内環境です。兵庫県の職場で出会ったおふたりですが、偶然にも亜裕美さんも同じ和歌山県出身で、ご実家も近かったそう。「それぞれの実家がとにかく『寒い家』だったので、春夏秋冬、心地よく過ごせる断熱性に優れた家にしたいね、と話していました」と亜裕美さん。目指すはつかまり立ちができるようになった1歳半の一葵くんがどこにいても寒さや暑さを感じない室内環境です。

大開口や格子などで太陽の光が差し込み、ぽかぽかと暖かい室内。家の中でひなたぼっこができるような快適な環境。

断熱計画を綿密にし、自然のエネルギーを有効に活用するパッシブデザインを採用。また、パッシブデザインの先進国であるドイツに住む、一輝さんのお姉さん一家の冬でもあたたかく過ごせる邸宅にも影響を受けました。軒の出をしっかり検討することで、夏の日差しを遮り、冬は太陽熱を取り込めるようにしています。「リビングの吹き抜けから近隣の住宅とは視線が合わない十分な高さに窓を設け、太陽の熱と光が部屋全体にいきわたるように計算しました」と中口社長。

和歌山市は瀬戸内海式気候に属し、年間を通じて天気や湿度が安定し、降水量も少ない。青空が似合う家となった。

開放的なLDKはテラスや庭へと自然にリンクしています。それは天井の一部と軒下を同じ木材を採用し、外と中のつながりを自然に感じさせる表現になっています。細部で視覚効果を狙うテクニックを取り入れています。「SE構法は一棟ごとに構造計算をしているので、柱や壁に頼ることなく、吹き抜けのような大空間も実現できるのです」と中口社長。LDKに配された書斎はLDKとの境界となる壁や扉がなく、オープンなので閉塞感はありません。LDKは吹き抜けと2階のフリースペースとがつながる大空間になっていますが、これだけの広さでも魔法瓶のように家全体を包み込む高断熱・高気密の住宅性能が実現しました。

吹抜けで2階のフリースペースにもつながり、明るく開放的なLDK。玄関前の書斎とを区切る壁も格子にして、光が抜けるように。

2階の床は柔らかな杉材を無塗装で
1階はメンテナンスがしやすいナラ材に

3つめのテーマは木のぬくもりに包まれた空間です。ここでも一輝さんがリサーチ力を発揮。「手触りが心地よく柔らかい杉材を無塗装のままでフローリングにしました。1階も杉材にしたかったのですが、過ごす時間の長いLDKは丈夫なナラ材を自然な塗装仕上げにしました」とそれぞれ木材の特性に合わせて、一輝さんが選びました。

2階の動線を広くし、吹き抜けに接したフリースペースと趣味に集中できる個室に分けた。下は2階から見下ろした風景。

浅井良工務店は創業以来、自社大工を有する数少ない設計工務店。木材選びや造作家具の設計など、要望にあわせた空間づくりに努め、O邸ではぬくもりを感じる無垢材の階段や、吹き抜けに接した2階の動線周りの格子などを端正に仕上げています。この各所に取り入れた無垢材の格子も、大空間を快適にするテクニック。さりげなく仕切りながら、お互いの気配を感じられる仕組みです。

階段は手すりも無垢材を使用した木のぬくもりをデザインに。仕切りなどは格子を採用し、光や風が通るようにした。

「階段の手すりや格子なども効率的に設計。個々の要望、描くイメージにあわせた木工加工も、熟練した大工集団を抱える浅井良工務店なら可能です。

キッチンも木材でまとめて優しい印象に。外部との境界線は屋根の軒下と同じ木材でつなげ、広く見える視覚効果を狙った。

「家づくりは楽しかったですね」と一輝さんは微笑みながら振り返ります。かつては淡路島一周に挑んだ趣味のロードバイクですが、子育てに忙しい今は、通勤がメイン。新居では愛車をローラーで固定し、一葵くんが遊ぶのを見守りながらテラスでトレーニングしています。

オープンな空間でありながら、LDKにつながる書斎、リビングと接したテラスや庭など、個の時間も楽しめる居場所がある。

今は遊び場となっている2階のフリースペースも、家族が増えたら個室にするなど、自在に変えられるのもSE構法ならではのメリット。Oさん邸はこれからも進化し続けます。

大開口からの光が注ぐ遊び場、フリースペースは将来、個室にすることも検討。リフォームが自在なのがSE構法のメリット。

O邸 データ

家族構成
夫婦、子ども1人
敷地面積
183.12㎡
延床面積
120.06㎡
階数
2階
設計、施工
浅井良工務店