天井の高低差が生むのびのびとした和空間







天井の高低差が生むのびのびとした和空間
1階にLDKと生活空間をまとめた効率のいい間取り
閑静な住宅街にあるA邸は日本家屋の様式を取り入れたモダンな邸宅。表通りからは平屋に見えるよう大屋根にし、一文字瓦を取り入れ、凛とした外観に仕上げた。「モダンかつ伝統的な和風の家で、庭との一体感があることがご要望のひとつでした」と設計を手掛けた可児義貴社長は振り返る。庭はAさんが選んだ樹木を主体としてコーディネイトし、可児さんが自ら石切り場まで足を運んで選定した自然石を各所に配した。
庭を眺めながらアプローチを抜けると玄関へ。右手に進むと広縁を通じ、モダンなデザインのLDKが広がる。柱や壁に遮断されることなく全体を見渡せる、のびのびとした大空間だ。リビングには玄関ホールからの光がガラスを通して差し込む。その奥には浴室とご夫婦の寝室が。「1階で日常生活がすべて完結する間取りにしたかったんです」とAさん。当初、ご夫婦二人で新居に暮らすことを想定し、2階の対の寝室はゲストルームにする予定だった。しかし入居後、大学生の息子さん2人も同居することになり、家族4人での生活となった。2階の子供室はともに大空間の吹き抜けに面しており、LDKと心地いい距離感を保ちながら、天窓からの自然光を共有している。1階のLDKの天井は、一番高いところで天窓のある5.2m、全体は3.2m。あえて低い部分をつくっている。天井に高い部分と低い部分をつくることで、吹き抜け部分の高さが強調され、気持ちよさが倍増する。
書が生きる、ミニマムで落ち着きのある和モダンインテリア
内装は漆喰の壁とウォールナット材、そして十和田石などの天然素材を基調に構成した。十和田石はグレーの地色に青緑色の地紋が入った天然石。無数の穴が開いている多孔質の石で、空気や水分を吸収し、断熱効果や調湿機能がある。
ダイニングの中心で静かな存在感を放つのは、天然無垢のウォールナットの一枚板のテーブル。原木の節や曲線をそのまま生かしたデザインだ。「内装を決定する前に、ダイニングにはこのテーブルを置くと決め、それに合わせて造作家具の素材やデザインを考えていただきました」とAさん。収納家具には落ち着いた色味と優美な木目のウォールナット材を使用しているが、テーブルの存在感に負けぬよう、裾に自然の根杢がある板をあえて取り入れた。キッチンも同じ材で造作。グラフィカルな節の木目が美しく、独特の存在感がある。研ぎ澄まされた、緊張感のあるLDKとなった。
そしてこのモダンな空間に映えるのが、知人の書家にお願いしたという書。ご主人と奥さま、それぞれのお名前の一文字を表した書が、リビングと坪庭前の廊下、寝室に飾られている。書があることで空間に和の雰囲気も生まれた。
技術に基づく信頼により自由な発想のコーディネイトに
A邸が立つのは、東日本大震災で液状化などの被害が目立った千葉県浦安市。家を建てるにあたり、Aさんは耐震に関する構法を自らリサーチ。行きついたのがSE構法だった。
「SE構法が得意で、さらに施工範囲が広く、デザイン性の高い設計で定評のあるクウェストさんにお願いすることにしました」とAさんは振り返る。設計担当の可児さんは、液状化にも備えるために、コマ型基礎工法という特殊な地盤改良を施した上に基礎を築く工法を、SE構法とともに提案した。「世界最古の木造建築物、法隆寺五重塔の基礎工法の理論を取り入れたのが、コマ型基礎工法の基礎です。コマ型の特殊なブロックにより地盤を強化し、地震や液状化に備えました」と可児さんは語る。
クウェストは住宅のほか、店舗やオフィスの施工も手掛け、需要があれば東北エリアの施工も請けるフットワークを誇っていた。そしてなにより、理論に基づく構造への理解、技術が信頼できた。「大まかな要望を伝えたあとは、全面的にお任せしました」とAさん。自由な発想でのトータルコーディネイトが生き、理想通りの家が完成した。
取材・文 間庭 典子
A邸
設計 | 可児義貴(クウェスト) | 施工 | クウェスト |
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所在地 | 千葉県浦安市 | 家族構成 | 夫婦+子供2人 |
延床面積 | 172.61㎡ | 構造・構法 | SE構法 |