大自然に包まれたラグジュアリーな山荘


LDK前には晴れた日、富士山を望める絶景テラスがある。隣接したサンルームのような簡易キッチン付きアウトドアダイニングともつながり、機能的。

木々に囲まれ、さまざまな方向から陽光が差す大空間。テレビ側の壁面は石積みのように見えるタイルを敷き詰めた。夕刻はより陰影が美しく、重厚に。

木々に囲まれた立地を生かした大空間。天井までをすべて開口として借景が1枚の絵のよう。キッチンは光沢のある素材を選び、光の反射を楽しめるようにした。常にキッチンまわりがすっきり片付くのは、奥にパントリーを兼ねた家事スペースがあるからこそ実現。見せる空間と作業する場を明確に分けた。

リビングは家具でゾーニング。LDKは汚れが目立ちにくく、メンテナンスもしやすい大判タイルでワンフロアに。テラスに直結したアウトドアダイニングは、愛犬3匹が自由に走り回れる場にした。

高級リゾートを日常にしてくれる、露天風呂感覚の開放的な浴室。壁や扉などにガラス素材を多用し、洗面スペースには鏡を連ねて森の景観が反射するように計算した。床はLDKに合わせた大判タイルに。外部に溶け込むような豊かな時間を過ごせる。

寝室の東側にあるYさんのオフィス。一段下げた位置を和室にするのはYさんからの要望。リラックスできる居場所になった。高い位置に窓を並べて、緑を取り込むことも実現。

斜俯瞰から見下ろす。両サイドには大きな開口部が。玄関東側をパーキングとし、屋根から延長した囲いをつくった。幹線道路からすぐとは思えない、緑豊かな環境。もともとはある文豪一族の別荘として知られた地。門から車寄せまでは長い上り坂があり、外部からは完全に遮断されている。

北側に面した寝室にはワンフロアでつながるテラスを設けた。テラスは南側に位置する和室へもつながる。

テレビ側は、ほぼ全面を石積みのようなタイル貼りで重厚な空間に仕上げた。プロジェクターで映せば大画面のホームシアターに。

ダイニングを兼ねたキッチンカウンターはステンレス製で、映り込む緑を楽しんでいる。グラフィカルなマスターズチェアを合わせてモダンに。

LDKの大開口はそのまま浴室への動線となり、柱や壁で視線を妨げない。

JRの駅や幹線道路も近いアクセスの良い立地。加えて小高い丘にあるため外部の気配を遮断しているY邸は、オンとオフを切り替えるには最適な環境で眺望も抜群。
自然とともに暮らすドラマティックな住まい
ラグジュアリーを極めた非日常と
快適に過ごす機能重視の日常を両立
ニューノーマルの時代となり、さらに上質な日常を求める人が増えた。リモートワークや遠隔でのコミュニケーションも当たり前で、通勤時間や住むエリアにとらわれず、自分たちならではの「城」を築く人も。住み手のYさんもその一人で、新潟を拠点にして多岐にわたる事業を展開している。この住まいは静岡県裾野市にあるが、かつては日本を代表する文豪一家の別邸があった場所だという。木々に囲まれ、温暖な気候、眺望にも恵まれた丘の上のロケーション。Yさんは、家族全員が心豊かで快適に暮らせる新居をこの敷地に建てることにした。理想は心を開放するラグジュアリーな非日常と、気楽で機能的な日常が同時にかなう住まいだった。「宮古島が好きで毎年訪れているのですが、夢のようなリゾートに宿泊しても、必ず1泊はフレンドリーなゲストハウスに家族で滞在しているんですよ」とYさん。その両極端なスタイルには、それぞれ良さがある。Y邸は、双方の長所を融合したかのようなハイブリッドな山荘となっている。
メリハリを利かせたゾーニングで
まったく異なる空間づくりが可能に
両サイドを大開口としたLDKは、まさに非日常の空間。晴れた日は富士山も望める絶景である。木々に包まれる大空間は、荘厳さのある石の壁に、ペンダントライトやキッチンなど、光沢のある質感を組み合わせて、グラマラスに仕上げた。家事スペースや収納はすべて東側のバックヤードにまとめ、家族全員のワードローブも1カ所に集約。日常に必要なものが、効率よくストックできる。
緑に囲まれ、近隣から遮断された環境を生かし、浴室は開放的な露天風呂風に。鏡が借景を反射することを計算し、ガラス素材を壁や扉に採用。全方位が緑に囲まれるような空間となった。アウトドアリビングとしてゆったりと過ごせるテラスとは別に、ガレージを秘密基地のようにして皆で楽しむためのスペースも設けた。BBQ用のグリルテーブルを置き、夏はプールを出して楽しむこともある。さらにドラム缶を利用した五右衛門風呂は、Yさんの自作。そして簡易キッチンのあるアウトドアダイニングは、普段はミニチュアダックス3匹の居場所でもある。このように上手にゾーニングすることで、最高級のリゾートのように端正な趣を保ちつつ、子供や愛犬が思いっきりはしゃぎ、仲間と集えるような場所も両立している。
双方の強みを生かした連携体制で
さらに質を高めた成功事例
Y邸の斬新さは、その計画の進め方にもあった。設計は、デザイン力のある、地元・新潟のroomz星野建築事務所に依頼したいと決めていたYさん。「今回、Yさんが見つけ出された土地が裾野市ということで、それならば梅原建設さんに引き継ぐのがいちばんだと確信しました」とroomz星野建築事務所の星野貴行社長は語る。ゆえに施工は、静岡近郊の気象条件や地形を熟知している梅原建設が手掛けることになった。「星野社長のダイナミックな空間づくりにはいつも圧倒されています。その卓越したセンスも人柄もよく知り、信頼関係を築けているので、安心して進められました」と梅原建設の梅原智之さん。工務店2社による協働プロジェクトとなった。お互いに信頼しあえる両社が、それぞれの得意分野を発揮。こうして唯一無二のプレミアムな山荘、Y邸は誕生した。
取材・文/間庭典子
Y邸
設計施工 | roomz星野建築事務所/梅原建設 | 所在地 | 静岡県裾野市 |
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家族構成 | 夫婦+子供1人+犬3匹 | 敷地面積 | 4,941㎡ |
延床面積 | 193.11㎡ | 構法 | 木造SE構法 |