空へと開いた日だまりの大空間


無垢材のぬくもりを感じる2階のLDK。3階は子供たちのためのスペースに。子供室を3部屋並べ、吹き抜けと大開口に面したプレイコーナーを配した。

家族が集い、それぞれの時を過ごせる拡張型リビング。約23㎡のルーフバルコニーや階段下のスペースを生かした小上がりの和空間もリビングの一部として活用。ゆとりの時間を過ごせるプラン。

圧巻のリビングのアクセントは無垢材の勾配天井。床や天井の無垢材を引き締めるのは、壁面の硬質な素材感のタイル。このグレーの壁は3階のプレイコーナーを目隠しする役割も担っている。

規格外の広さともいえる3.64m×6.37mのルーフバルコニーは第2のリビングとして活用。天気のいい日にはここで過ごすことも多い。壁の高さは、隣のマンションからの視線を遮られるようにとシミュレーションを行いながら高さを決め、スケッチアップにて確認した。プライバシーが確保され、安心してテラスで過ごせる。ランドリーからもそのままつながる家事動線になっている。

キッチンまわりの動線も余裕のあるプランニングが実現。ダイニングキッチンの天井の壁のみ、左官塗りを採用している。防音効果も期待できる珪藻土を使用。手仕事ならではの風合いが美しい。

プライバシーが完全に守られた外観。スケッチアップ後も向かいの校舎や近隣の集合住宅まで足を運び、さまざまな条件でも内部が見られないことを確認しつつ、工事を進めたそう。

集合住宅と接しているため、大きな開口を望めない1階には坪庭から採光し、明るいエントランスに仕上げた。

1.大開口に面したプレイコーナー。テレビ台の壁が目隠しとなり、リビングから見えない位置にあるため、急な来客時にも気にならない。/2.子供室は入口近くにクローゼット、奥に収納を設け、空間を有効に使える部屋に。

3.作業や読書に集中できる1階のこもれる書斎。蔵書をすべて収められるよう壁面に書棚を設置。/4.並んで勉強ができるカウンターデスクを造作したスタディコーナー。リビングからは死角となり、個室のような独立した空間。
愛媛の恵まれた気候を
最大限に生かすスマートハウス
温暖な気候や環境に恵まれているためか、愛媛ではパッシブデザインに対する意識はまだ高くないという。その豊かな自然を生かす設計へとシフトしていきたいと、TOAHOMEの濱㟢 信社長は語る。先々代から土地を受け継ぎ、新築することにしたこのO邸は、最大限のパッシブデザインと、最小限のアクティブデザインを組み合わせ、省エネルギーを実現した好例。「祖父が家を建てた時代にはまだ周囲に建物はなかったのですが、次第に大きな建物に囲まれて日当たりが悪く、暗く寒い住環境になってしまいました」とOさんは振り返る。そこで常に明るく、温かい住まいを目指した。耐震性を確保したうえで、大開口や吹き抜けを実現できるSE構法を設計担当の清水健司さんは提案。「両脇が集合住宅、目の前が学校の校舎なので、ルーバーや高さのある塀で外部から見えないようにしています。それでもLDK全体に光が差し込むのは、約23㎡とゆったりとしたルーフバルコニーからの十分な採光があるからです」と清水さんは解説する。ここはアウトドアリビングや子供の遊び場にもなる。3階への階段や廊下は吹き抜けに面し、日中は常に明るい。廊下を拡張したようなスペースは子供たちが自由に遊べるプレイコーナーとした。成長後はライブラリーとして読書を楽しむ空間にする予定だという。
夏の高度の高い日差しは庇でカットし、冬は最大限の太陽熱を取り入れられるよう、緻密な計算を重ねた。外張り断熱や屋根断熱、ウレタン吹き付けなど断熱を強化。南面以外の3方はAPW430トリプルにするなど、用途に合わせて調整した。各所に配した高窓からは、風が心地よく通り抜ける。「デザインの自由度が可能となるSE構法とパッシブデザインの相性はよいと、改めて実感しました」と清水さんは語る。
大空間にメリハリをつけて
それぞれの居場所を配した
大空間には家族それぞれが、自分の時間を過ごせる居場所を用意した。例えば階段下の小上がりの和室は、少し段差があることで、ソファでくつろぐ家族が視界に入らず、テレビを見られる。キッチン横にはカウンターデスクを造作し、子供が宿題に集中できるスペースに。リビングからは死角になるため、互いの気配は気にならない。Oさんの要望はこもれるコンパクトな書斎。在宅でも効率よく仕事が進められる基地だ。
上質な素材が大空間を
より美しく、端正に仕上げる
Oさん夫妻と濱㟢社長は高校時代の同級生。そしてOさんは建材を扱う素材のスペシャリストでもある。キッチンのサイルストーン、テレビ側のタイルなど扱う上質な建材から選んだ。同じ白でも質感や風合いによってシンプルな大空間にリズムが生まれる。「生活の中で実際に触れてみて、いい素材はやはりいいと確信し、力強くお客さんにすすめられるようになりました」とOさん。毎回の打ち合わせは高揚したそう。「デッサンを描くように思うままに描いた設計図を、期待以上の機能で提案され、うれしい驚きがありました」とOさんは振り返る。
実は母体が左官職人を束ねた企業、濱㟢組だというTOAHOME。「ダイニングの天井は、濱㟢組に依頼しました」とOさん。道後温泉本館の修復工事も手掛けるという匠の技により、さらに上質な空間に。豊かな大空間が上質な素材の力によって、さらに格上げされた。
取材・文/間庭典子
O邸
設計施工 | TOAHOME 一級建築士事務所 | 所在地 | 愛媛県松山市 |
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家族構成 | 夫婦+子供3人 | 敷地面積 | 192.85㎡ |
延床面積 | 242.62㎡ | 構法 | 木造SE構法 |