見晴らしと心地よい居場所を両立させた空につながるLDK


キッチン側からもパノラマビューを存分に楽しめる。隣のスペースはパーソナルジムや猫たちの遊び場など、多目的で使えるセカンドリビングとした。

眺望を楽しみながら、個としての時間も過ごせるセカンドリビング。防犯格子「Lattice Guard」のデザインを取り入れ、ここでも空間のアクセントに。

ゆったりとした玄関ホール。右手側がゲストルームを兼ねた和室で、離れのようにプランニング。宙に浮いたような片持ち階段がゲストの目を引く。

ダイニング側の扉を開くと小さな書斎が。天窓から自然光が注ぎ、こもっていても心地よい時間が流れていく。猫たにとっては絶好の日なたぼっこのコーナーになっている。

高台にあるため、玄関のある道路側の開口は最低限にし、南側に開くプランを採用した。

下部が約107㎡、上部が約113㎡というオーバーハング。1階にガレージや寝室など生活空間をまとめ、日常生活のほとんどを過ごすLDKの面積をできるだけ広くとった。

セカンドリビングを含むL字型のLDKは、眺望を眺めながらそれぞれの時間が過ごせるレイアウト。高窓から光と風が通り抜けるようになっている。
シームレスなパノラマビューラウンジで、悠々と過ごす贅沢
ホテルのラウンジのようにラグジュアリーで見晴らしのよいLDKを有するM邸。住宅地にありながら高台の立地は、絶景が見渡せ、空が近いと感じるパノラマビューが存分に楽しめる。その伸び伸びとした空間に視界を遮る柱や壁はない。だが同じ空間内でも家族がそれぞれ自由に過ごせるよう、キッチンとダイニング、リビングをL字型に配置した。なかでもユニークなのは、LDKをこのプランにすることによって生まれたセカンドリビング。元々は喫煙用としてスチール製のオリジナル建具で仕切った空間だったが、パーソナルジム、猫たちの遊び部屋、1人で過ごせるサンルームなどさまざまな用途に対応するフリースペースとして活用。視覚的にはキッチンやリビングを見通せるので、家族は互いの気配を感じながら、それぞれの趣味や作業に集中できる。
LDKの北側にはパントリーや奥行きと幅を合わせて設計したピアノのレッスンコーナー、猫たちが日なたぼっこもできる書斎などを並列。天井近くには高窓を連ねて、光と風がLDK全体に行き渡るよう配慮した。階段まわりにキッチンと同じ素材のキャビネットを造作して収納スペースを増やし、W.I.C.をファミリークローゼットとしてまとめることで、LDKがより広く感じられるようにしている。「W.I.C.の壁の上部はあえてふさがず、2階全体を1つの空間のように見せています」と、設計担当であるkotoriの鈴木康弘さん。端正な仕上げの積み重ねで、自宅に居ながらにして非日常を体感できるパノラマビューラウンジとなった。
1階の玄関ホールも豊かな空間が広がる。正面のアーティスティックな片持ち階段がゲストを迎える。幾何学的な階段、間接照明で演出した上がり框など、家の役割として欠かせない部分がオブジェのように美しい。玄関を入って右手にある和室は客間を兼ねており、常にふすまを開け、広々とした玄関ホールの一部として存在している。一方の左手は寝室、ガレージへと続き、公私の動線が自然に分けられているプラン。ここも2階のLDK同様、シームレスな大空間でヌケのある伸びやかな邸宅が演出されている。
そして、スチールの格子が特徴的なM邸。このうち寝室や和室の格子は意匠かつ防犯性が高いセキュリティガードで、住み手のMさんが考案し、「Lattice Guard」と名付けられた。「外部に取り付ける窓格子だと、格子ごと外されると、窓を割ってすぐに侵入できますが、これは内部に設置しているので、窓を割られた時点で警備会社に連絡がいき、リスクが軽減されるのです」とMさん。奥まで見通せて閉塞感がないので、寝室以外の和室やLDKにもこのデザインを造作。幾何学のパターンは洋室にも和室にも調和し、インテリアに取り入れやすく、シャープな黒の格子は空間を引き締める。白の格子は景観にもなじみ、2階の眺望を遮ることなく楽しめる。
シームレスな開放感を実現するSE構法による大空間や大開口を、さらに心地よい空間にするのはデザイン力。「Mさんのアイデアによって生まれた『Lattice Guard』は、空間のアクセントにもなりました」と鈴木さんは語る。機能も美しさも兼ね備えた格子や階段、収納により、唯一無二の独創性の高い住まいが完成した。
取材・文/間庭典子
M邸
設計施工 | kotori | 所在地 | 愛知県 |
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家族構成 | 夫婦+子供1人+猫 | 敷地面積 | 259.56㎡ |
延床面積 | 220.60㎡ | 構法 | 木造SE構法 |