船上のくつろぎを再現した絶景を楽しむ熱海の別荘


ダイニングテーブルの上の天井は、板張りのリゾートスタイルに。テーブルなどの家具の重厚さと、ナチュラルで風通しの良い空間のバランスが絶妙。

つややかなモザイクタイルがキッチンを華やかに演出。アーティスティックな動物モチーフのオブジェが生き生きと映える背景に。キッチンや浴室なども別荘建築に実績のある梅原建設が手掛けた。

広々とした庭には絶景を楽しめるバブルバスも設置。斜面を生かして宙に浮かぶような設計にした。夕暮れ時は街の明かりがきらめき、さらに美しい景観に。

相模湾を一望できるリビングの大開口の壁面は、かつて船に付いていた丸窓と舵でデコーレション。豪華客船でクルージングしているようなゆったりとした気分になれる。壁は1面だけレンガ風タイルを使って重厚さを出している。

海水浴を楽しむ夏はもちろん、一年を通して温暖な気候の別荘地、熱海。サンルームから取り込む太陽エネルギーで、冬は蓄熱効果も期待できる。

吹き抜けの玄関ホール。壁面のニッチを飾り棚にし、旅の思い出である各国のオブジェを飾った。ガラスブロックからは優しい光が。

相模湾が一望できる寝室。窓際にはベンチを設け、読書を楽しんだり、風景を眺めて過ごせるようにした。寝室からも星空を眺めたいという住み手の要望で、天井に開閉式のオープンルーフも設置。日中は光を取り入れ、常に明るい室内に。

露天風呂のように外に開けた温泉。テラスにそのままつながり開放的。浴室全体がスチームサウナになる設計のため、天井がカーブを描いている。

1.浴室周りは彩りも美しいステンドグラスを使い、プライバシーを守りつつ、光を取り入れるようなプランを採用した。/2.外壁にも重厚感のある石張りの壁を多用し、奥行きを感じさせた。
アロハスピリッツを感じる風通しのいいダイニング
3階に石風呂を配した
相模湾の絶景を望むヴィラ
水平線まで見渡せる高台からの絶景を誇るH邸は、週末をゆったり過ごすための熱海の別荘。1400m²以上もある広大な敷地にはゴルフの練習もできる芝生が広がり、アプローチには広い車寄せがある。アールが印象的なこの3階建ての邸宅が木造建築だと知ったら、誰もが驚くことだろう。中でも眺望がすばらしい最上階にある温泉風呂は画期的だ。
「3階建てですし、重量のある石風呂やこれだけの大空間を考えていたので、鉄筋造や鉄骨造にする案も出ましたが、癒やしの別荘にはやはり木造の持つ柔らかさやしなやかさが必要。そこで強度に優れた重量木骨のSE構法を提案しました」と梅原建設の梅原智之さんは語る。SE構法は構造躯体に強度が一定の集成材の柱を使用するため、一棟一棟の構造計算が可能。また、柱と梁を特別な金物を使用して接合するので、断面欠損が少なく耐震性に優れている。
「構造的には1階に広めのガレージや車寄せがあ り、3階に見晴らしの良い石造りの温泉風呂があるのがポイントです」と梅原さん。構造計算により、強度はもちろん、必要最小限の耐力壁や柱だけで大空間をつくることがかない、在来の木造ではありえなかった圧巻のLDKが完成。SE構法を最大限に生かし、木造住宅の不可能を可能にした。
大海原へ繰り出すような
LDKのデッキと大開口
「眺望が開けたリビングの窓際にあるのは、実際に船で使われていた真鍮の丸窓と舵です」と海を愛する住み手のHさん。豪華クルーズ船で航海するような、ゆったりとした気分が味わえるスタイリングだ。週末だけの休息でも、海外のリゾートでリフレッシュするような非日常な空間がコンセプトだった。天井高や開口を最大限にするなど、伸び伸びとしたスケールにし、デッキやサンルームなど、内部であり外部でもある居場所を多く設けている。ガラス屋根と丸い壁に覆われたサンルームには、シンクやバーベキューグリルを設置。ゲストが集まるときに活用できる第二のリビングとなっているという。「サンルームは、もともと広いルーフバルコニーだった場所をより有効に活用するため、竣工後に改築したんです」とHさん。シンク周りには原色のタイルをモザイク状に敷き、変化をつけた。天窓からも柔らかな光が注ぎ、サンルームは室内と外をつなぐ橋渡しのような役目を果たしている。
タイルやロートアイアンの
華やかな意匠で彩った空間
マテリアルの使い方が面白いのもH邸の魅力で、サンルームだけでなく、キッチンにもインパクトのある赤いモザイクタイルを使用。鮮やかで複雑な色合いのタイルが、木のぬくもりあふれるナチュラルな空間を、住み手の個性が際立つインテリアへと進化させた。ダイニングや浴室にも ステンドグラスを取り入れ、より表情豊かな空間に仕上げている。
また、門や玄関扉だけでなく、室内にロートアイアンを取り入れたのもH邸の特徴。錬鉄の力強く美しいラインが空間をより印象的なものにし、邸宅の中央に位置するらせん階段はこの家の顔の一つに。壁には採光に優れつつ外部からの視界を遮ってくれるガラスブロックを配し、ニッチを設けてギャラリースペースにした。
熱海の温暖な気候に身をゆだね、心身共にくつろげる理想の別荘となった。
取材・文/間庭典子
H邸
設計施工 | 梅原建設 | 所在地 | 静岡県熱海市 |
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敷地面積 | 1427.15m² | 延床面積 | 403.36m² |
構法 | 木造SE構法 |