2024.10.15

書斎を囲み、それぞれの機能が独立したLDK

日常も非日常も上質にする、既成概念にとらわれない自由な空間

あるときには大事なゲストをもてなす社交の場、またあるときには研究や業務に没頭するラボやオフィス、そしてラウンジバーやホームシアターにもなるLDK――。暮らしのなかの各シーンに合わせて自在に変化する多様性がO邸の特徴。2階のフロア全体を生かしたLDKの中央に眼科医であるOさんの書斎を配置している。通常ならば部屋の片隅に独立させ、閉鎖的な空間になりがちな書斎を、大胆にもLDKの中に組み込み、見せる空間にした。そのブースを取り囲むように、リビングやダイニング、フリースペースが点在する。それぞれの機能をもつ空間が、交差するように重なりつつ連結しているため、夫婦が同じ空間で過ごしていても、それぞれが心地よく自分のことに集中できる。
 
 
この自由さは壁や扉などで仕切らない空間構成だからこそ可能。階段を上ると視線が遮られることなく、リビングの奥までLDKを見渡せる。「フリースペースとの仕切りは、腰壁にしてLDKと一体化させました。各所に開口を設けて、光や風が通り抜けるようにしています」とビルド・ワークスの河嶋一志さん。フリースペースは学生時代からバンドを組み、今も音楽を嗜むOさんが仕事の合間に演奏しリフレッシュする空間であり、自然光のなかでエクササイズができるスタジオとして活用している。
 
 
そんなLDKのなかで特に異彩を放つのがキッチン。「生活感を出したくないので、裏方であるキッチンは完全に独立させ、ダイニングから見えないようにしました」と奥さま。その結果、開放的でありながら、収納棚や冷蔵庫やレンジなどの機器はダイニングから見せない、すべてバックヤードに徹したキッチンが完成した。とはいえキッチンからは山々や近隣の植栽の緑が見えて、晴れやかな気分で調理ができる。道路を挟んだ向かいには桜の木も連なり、春には窓を桜色に染める。ダイニングテーブルに集うゲストからはその借景だけが目に入るという仕掛けが施された。
 
 
また、O邸は昼と夜でがらりと印象を変えるのもこの空間の魅力。自然光に包まれた軽やかな昼のLDKが一変し、夜はシックなレストランのようなムードに。「ディナーを楽しむためのライティングとして、できるだけ抑えたバランスの調光に設定してもらいました」と奥さま。ゲストを招くときには、キッチンの明かりを落とし、間接照明やキャンドルなど柔らかな光を楽しむ。そんなときは中央の書斎そのものがランプのような存在になる。音楽を聴きながら、映画を見ながらのバータイムも格別だ。さわやかな昼のLDKとは異なり、濃密な空気が流れる。
 
 
エントランスはアートや愛車のフォルムを楽しむためのギャラリースペース。効果的に配した開口により、ここでも日中の軽やかな光とドラマチックな夜の照明では、まるで別の邸宅と見間違うほど表情を変える。玄関ホールの壁に飾っているのは京都の老舗「細尾」による西陣織のテキスタイル。光の加減で金の糸がきらめき、織による光沢や陰影がアーティスティックに変わる。また、アプローチの大きな鉢に植えたドウダンツツジをシンボルツリーとして夜はライトアップしている。新緑の時期も美しいが、枝だけとなった冬に、そのシルエットが外壁に映る様子もドラマチックだという。ここには表札は掲げず、アーティストに依頼して創作してもらったオブジェをO邸の目印とした。そのようなエントランスからLDKまで訪れる人の目を楽しませるアイデア──。
 
 
ゲストのために備えた演出で、日常そのものを上質にする住まいが完成した。
 
 
取材・文/間庭典子

O邸
設計施工 ビルド・ワークス 所在地 京都府京都市
家族構成 夫婦 敷地面積 236.75㎡
延床面積 153.53㎡ 構法 木造SE構法

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