ラグジュアリーに昇華した進化系パッシブデザイン


2階の回廊のどこからもLDKを見下ろし、家族の気配を感じることができる。ミニマムな空間にトム・ディクソンの照明、メルトを3つ連ねてアクセントに。

庭に面したリビングの面積とほぼ同じ40畳を有するダイナミックな吹き抜け。

キッチンはキッチンハウスのニュアンスのあるグレーを選択。食器棚、パントリーを兼ねた壁面収納を設け、すっきりと。一角には奥さまが作業できる家事スペースとしてデスクを造作した。

1.玄関からLDKへの動線とは別に、ファミリークローゼットや土間収納へいく裏動線を設けた。ギャラリーとしてゲストの目を楽しませている。/2.通り土間の奥は斜め壁とし、最大限の大きさの開口を設け、採光を確保。人通りの多い公道と距離を保てるので、室内は常に静かな環境をキープ。

RC壁や階段以外にも、蓄熱性の高い素材の壁をテレビ裏に設け、その裏に電子ピアノや書棚を配置している。LDKからの目隠しとなり、おもちゃなどもその壁面を利用して設けた棚に収納。育ち盛りのお子さんがいても端正な空間を保つことができる一石二鳥のアイデア。

3.ダイニングの壁面にはお子さんたちが並んで勉強できるデスクを造作した。/4.サンルームはエクササイズスタジオとして活用。トップライトからの日射で蓄熱性を持たせ、室温を安定させる機能も兼ね備えている。

北東側の一面だけをレッドシダー張りにしたアイコニックな外観。

LDKへと続くエントランス。階段裏に収納スペースを配し、あえてリビングの目隠しとしている。

2階のプライベートジム。窓の外に見えるのは手動のルーバー。

階段途中のフロアにはIさんのオフィスを。浮遊するような開放的なデザインのため、見通しがよくて圧迫感がない。

サッカーフィールドやプールサイドにもなる人工芝の庭。バルコニーに設置したのは、1枚ごとに角度を変えられるPASSIVE DEIGN COME HOMEが考案したエコなルーバー。電動とは違い、手動で細やかな調整ができる。
機能性とデザイン性を自然に両立させた居住空間
デザインも機能も妥協せず
RC壁をパッシブデザインに生かす
ラグジュアリーな洗練とパッシブデザインの機能の両立という謎かけのような課題に取り組み、それまでのエコスマートな住宅をさらに進化させたI邸。設計施工を手掛けたPASSIVE DESIGN COME HOMEは、名古屋の中心部に住宅を建てる機会が多く、それぞれの立地条件やライフスタイルに合わせて細かく調査、調整を重ね、パッシブデザインを追求している。「Iさんが望まれたのは耐震性と吹き抜けの大空間でした」と代表の木村真二社長は語る。40帖という大きな吹き抜けを囲むような回廊方式の階段、動線から2階の各部屋へアプローチできるプランを採用した。
デザイン面で意識したのは研ぎ澄まされたシャープさ。「打ち放しのコンクリートのような、硬質でスタイリッシュなイメージが理想でした」と奥さま。そこでリビングに2階まで貫くRC壁とオブジェのようなRCの階段を設けた。「RCの壁や階段、2階の床などは荷重を構造計算したうえで、構造体とは切り離して計画を行いました。ヴィジュアル面だけでなく、蓄熱利用することで、室温の安定につなげるためにもRCは有効です」と木村社長は説く。テレビ側の杉板コンクリート壁も蓄熱性の高い素材が選ばれた。
視覚と省エネの相乗効果で
立地や空間の魅力を引き出す
I邸にはLDK以外にも自然のエネルギーを効率よく取り込むための仕掛けが各所にある。2階のサンルームもその好例。窓やトップライトからの日射を有効に活用し、北側にある寝室の室温を安定させている。「空調設備に頼らない自然室温で冬の朝6時で15℃以上、夏は最高35℃以下を必達として室内シミュレーションを何度も重ねました」と木村社長。必要に応じた断熱材を配し、窓は断熱性能に優れたモデルのサーモスX以上を標準とするなど、基盤を整えたうえでのパッシブデザインは大幅な省エネルギーへつながる。将来を見据えて、太陽光発電も設置した。夏は南向きの大開口へ差し込む太陽熱を遮断し、冬は最大限に自然光を取り込むために、一枚一枚の角度を手動で変え、細やかに調整できるルーバーをルーフバルコニーに設置。
エントランスの脇から続く、通り土間もフォトジェニック。収納やランドリーなどの生活エリアへつなぐ裏動線でありながら、ギャラーのような空間で、奥の大きな開口からは光が差し込む。ヌケを生み出す視覚効果も期待できるが、外部と遮断する外壁のような機能も果たす。外観は、白いキューブ状の一面だけをカットしたようなレッドシダー張りの部分が目をひく。夜に明かりが灯った風景も美しく、閑静な住宅街の中で洗練されたデザインが際立つ。角地を生かした魅力的な外観だ。
緻密に計算された
確かな快適性の追求と実現
住まいは家族の命を守り、健やかに、快適に過ごすための礎となる場所。住み手のIさんは医師という職業柄、数値を読み取り、耐震に必要な強さと快適さ、省エネ、デザイン性のバランスレベルが高いと判断し、PASSIVE DESIGN COME HOMEに依頼することにしたという。
今やパッシブデザインが機能的であることは当たり前となっている時代。「太陽エネルギーをうまく取り入れて、陰影の意匠など、光と影が織りなす自然の美しさも追求していきたいですね」と語る木村社長。生活の質をさらに向上させるべく、その先を目指して未来へと進んでいる。
取材・文/間庭典子
I邸
設計施工 | PASSIVE DESIGN COME HOME | 所在地 | 愛知県犬山市 |
---|---|---|---|
家族構成 | 夫婦+子供2人 | 敷地面積 | 369.00㎡ |
延床面積 | 210.89㎡ | 構法 | 木造SE構法 |