2025.04.21

テラスや吹き抜けへと拡張する伸びやかなLDK

リビングから広がるさまざまな居場所が日常を豊かにする

吹き抜けの天井高が約5mという圧倒的な大空間が広がるK邸のリビングは、まるでホテルのラウンジやカフェのようにスタイリッシュだ。ソファやチェアをあえてランダムに配置して、違うアングルでの眺めを楽しめるようにしている。木造でも梁が見えないダイナミックな吹き抜けは、最低限の構造柱でも耐震性が高い木造SE構法だからこそ実現できた大胆なプラン。その結果、ガレージもまた柱や壁に遮られることなく、約6mの間口のある大空間を得られた。玄関ホールの床から続くアカシアの無垢材のナチュラルさと、シャープな黒の建具、アイアン手すり、サッシなどを絶妙に調和させ、独特の雰囲気に仕上がっている。
 
 
「1階リビング南北両方に大開口の掃出し窓を設け、北側はウッドデッキの中庭に、南側はアウトドアダイニングのようなテラスとしてリビング空間を拡張しています」と幸和ハウジングの深田真也さん。フロアダウンをさせたリビングとタイルデッキとリンクさせ、ワンフロアにした。「室内のリビングタイルと中間領域であるテラスのタイルを共通にすることで、視覚的にも外と内のつながりをもたせています」と深田さんは語る。この地は気候が温暖で年間を通じて外で過ごせる日が多く、アウトドアダイニングは重宝しているそう。
 
 
大空間だからこそ、さりげないゾーニングを心掛けた。「1階フロアでリビングだけ1段下げ、床材もタイルに替えています。段差により視点が変わり、床の色や素材を変化させることで、仕切りがなくてもキッチンダイニングや廊下と違うエリアであることは視覚的にわかるのです」と深田さん。このような配慮により、大空間が間延びすることなく、調和のとれた居心地のよい場になっている。
 
 
2階には吹き抜けと接した動線上にワークスペースや洗面を配置し、空間を有効に活用した。同じ室内で過ごしていてもフロアが違うことで、デスクに向かって作業する側とリビングでくつろぐ側は、双方の気配を感じつつも存在が気にならない。そのためのレイアウトを熟考し、夫婦共に過ごしつつも、個の時間を楽しめる住まいにした。
 
 
「Kさんのコンセプトは固まっており、工務店として提案するというよりは、そのイメージを具体化するために意見を出し合い、一緒につくり上げたという印象です」と深田さんは当時を振り返る。Kさんはエクステリアデザインの会社を経営する外構のスペシャリストであり、K邸の外構や造園も「Exterior & Garden K.T.U」にて設計施工。デザイン性に優れた住居のエクステリアを手掛けてきたKさんならではの
センスが光る。キッチン回りも自ら設計し、コストパフォーマンスにも優れたIKEAのキャビネットを採用するなど、自身のライフスタイルに合わせてコーディネートした。
 
 
外構は全方向から屋根や樋が見えないようにするため、中庭をつくり、そこに向かって屋根の勾配や樋を落とし、ボックスを組み合わせたようなファサードに仕上げている。まるで美術館やギャラリーのような、隙のないモダンな外観は緻密な計算による賜物である。設計者と工務店そして住み手が妥協することなく、プロ同士が技を極め、他にはない洗練と快適を両立させた住まいが完成した。
 
 
取材・文/間庭典子

K邸
設計施工 幸和ハウジング 所在地 静岡県焼津市
家族構成 夫婦 敷地面積 411.07㎡
延床面積 188.29㎡ 構法 木造SE構法

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