空気も光も通り抜ける吹き抜けのあるLDK


5.4mのダイナミックな天井高を有する開放的なダイニング。フロスの大小2つのペンダントライトがプレーンな空間のなかでの効果的なアクセントになっている。

LDKの南側を開口にし、北側にテラスを配することで光と風が通り抜けるプランに。玄関や廊下を仕切っているテレビを設置した壁は上部や左右をあえて開き、さらなる奥行きを実現。

1.LDKはすべて白で統一し、クリーンな印象に。キッチンの腰から上の位置にはキャビネットを設けず、白壁を生かし、飾る収納を楽しんでいる。/2.キッチンと玄関の間のテラスから光を取り込む。調理中でも家族の帰宅がテラス越しに見え、気配が感じられる。

玄関ホールとLDKの間には扉を付けず、間仕切り壁でゾーニングし、奥まで見通せるようにした。軽やかなスケルトン階段を採用し、その下には通勤用のスポーツバイクを収納。

落ち着いたグレーの壁と間接照明が安らげる寝室。

あえて北側に約16.5㎡の広々としたバルコニーを配した。2mの壁を立ち上げ、外部からの視線を気にせずにくつろげるアウトドアリビングとなった。

3.正面の壁を深みのあるグリーンにしたご主人の書斎。1階のLDKは仕切りのない開放的な空間なので、プライベートのスペースはこもれるような間取りに。収納家具や飾り棚を造作した。/4.ゲストルームにもなる和室もプライバシーが守られる設計になっている。収納家具や棚は造作し、下部を開けることで圧迫感が感じられない。

外観はダークグレーの吹き付け塗装をベースに、黒やチャコールグレーのガルバリウム鋼板を組み合わせて変化を付け、重厚感と迫力を感じられるように仕上げた。
大開口とダイニング上の吹き抜けからの光が、安らぎと静謐な時間を紡ぐ
K邸の玄関の扉を開くと、テラスのイロハモミジに迎えられる。春や夏には青々と葉を茂らせ、秋には見事に紅葉し、帰宅する家族やゲストの目を楽しませてくれる存在だ。邸内のエントランスホールとLDKを隔てる扉はない。テレビを設置した間仕切り壁がパーテーションの役目を果たしながらも、緩やかなひと続きの大空間として天井を共有している。吹き抜けを有した圧巻のLDKには柔らかな光が差し込み、家族が集ってくつろぐ和やかさと、背筋が伸びるような凛としたスタイリッシュさという、2つのシーンの舞台となった。そんな相反する空気が自然に共存しているのがK邸の大きな魅力である。ここは南東の壁にも開口部が連なっており、吹き抜けの上部にも開口があるため、日中は常に明るい。直線だけの研ぎ澄まされたシャープな空間にスタイリッシュなペンダントライトがオブジェのように映える。
「最初は訳もわからず、ただ広い50㎡近くものLDKを希望していました。家づくりを始めた当初は、広さについての具体的なイメージができていなかったんです」と奥さまは笑いながら振り返る。そんなKさん夫妻への丁寧なヒアリングを経て、設計を担当したタイコーアーキテクトの前田 良さんは家族のライフスタイルにちょうどよいと考えられる広さ約40㎡のLDKのプランを提案した。それは、開口部が連なり奥にまで空間が広がる、懐が深くて柱や壁のないSE構法の特性を生かした伸びやかな空間である。
「以前、仕事の関係でインドネシアで数年間暮らしていた経験があり、間仕切りの少ない開放的な家にはあまり抵抗がありませんでした。しかし、日本の気候で玄関スペースと居室内の間に壁がないのは、冬場に室温がかなり下がってしまうのではないかと思って。その点は不安でした」とKさんは語る。結果、実際に住んでみると冬に冷気がLDKへと流れ込んでくることもなく、真冬でも室温は保たれた。それは配置計画と日照条件のバランスを見ながらゾーニングを行い、パッシブデザインを考慮して、緻密に計算を行ったタイコーアーキテクトの設計力によるところが大きい。例えば、南側に水平連続窓を設けて太陽の光と熱を効率よく取り込み、必要に応じた断熱材を各所に配置した。そのため冬は暖かく、夏は風が通り抜けて涼しく快適に過ごすことができる。さらに「玄関と室内の境となる壁や扉がないことで、買い物から帰ってきても荷物を下ろさずに、そのままキッチンへ運び入れることができるのがすごく便利なんです」と奥さま。間仕切りのない住空間は、無駄のない生活動線も叶えている。
またこの住まいでは、新たに家具を持ち込む必要がないほど綿密な収納計画も実施。他にもキッチンや洗面台の面材、キッチン背面の照明計画など、特に水回りには奥さまのこだわりが詰め込まれている。「ウキウキした気分でお料理や朝の支度をしています。毎日使う場所ですし、やはり一生ものだと考えて。コストは気にしつつ、後悔のない選択をしました」と奥さまは語る。エアコンや掃除用ロボットが隠せるようテレビボードも造作。快適に家事を行えるうえに、常に端正な空間を維持できる住宅としての機能性も配慮された。
“閉じない空間”をコンセプトに開口部の配置を検討し、断熱も徹底して行い、パッシブデザインを味方にしたK邸。家づくりで重視すべきなのは実際の床面積ではなく、いかにリラックスして心地よく暮らせるか──。この大原則に従い、広さと伸びやかさが感じられるプランと快適な室温が両立する大空間が生まれた。
取材・文/間庭典子
K邸
設計施工 | タイコーアーキテクト | 所在地 | 大阪府堺市 |
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家族構成 | 夫婦+子供2人 | 敷地面積 | 222.75㎡ |
延床面積 | 132.48㎡ | 構法 | 木造SE構法 |