シンボルツリーを囲むL字型コートハウス


キッチンダイニングの壁面を全面引き戸のキャビネットにすることで、十分な収納を確保した。収納扉を開くとワークスペースになるデスクを造作した一角もある。

LDKのどこからでも中庭のシンボルツリーを眺められるプランに。太陽の光と熱が室内にもたらされ、中庭の植物によってシンプルな内部空間に彩りが生まれた。

外壁で囲まれたルーフバルコニーは、アウトドアリビングとしても機能している。浴室にも隣接しているので、入浴後にチルダウンする場としても有効に活用。

外壁も内装も同じトーンの白い壁でつなげて、アウトドアと内部の境界が感じられないように配慮。LDKが外まで続いているように感じる視覚効果も実現した。

I邸の要望の1つはビリヤード台を置けるほど広い空間の趣味室。大きな白壁に投影し、ホームシアターにもなる多機能な空間とした。広いLDK同様、1棟1棟構造計算し、データに基づく強度を叶えるSE構法だからこそ実現したプラン。

1.ダイニングキッチンの背面に位置する収納の、4枚の引き戸を開くと造作したデスクが現れ、オフィス仕様になるアイデアを採用。/2.L字型のプランの南側には浴室を配置。西側のLDKとは90度に位置するため、視線がまったく交差せず、露天風呂のような感覚で外の緑や空を見ながらゆったり入浴できる。

玄関部分にはステップの片方だけを壁に固定し、浮遊しているように見える片持ちのキャンティレバー階段を採用。

趣味室や寝室など、1階の部屋からもテラスのシンボルツリーが眺められる。

キューブ状のシャープな外観。敷地を最大限に生かし、外壁は塀も兼ねているデザイン。内には開き、外部には閉じて、プライバシーも配慮されている。
限られた空間を最大限に生かし、「見せる」と「隠す」のメリハリをつける
中庭を囲むL字型のプランのI邸。リビングや寝室、浴室などあらゆる場所からシンボルツリーを眺められる、明るくてクリーンな住まいだ。奥さまは、プロダクトデザイナーとして活躍し、仕事柄、イメージを具体化するセンスとコミュニケーション能力があった。ゆえに基本設計は奥さまといえるほどの確固たる理想があり、打ち合わせの時点で映像化できるほどの鮮明なイメージが描けていたという。一方、依頼を受けた住まい設計工房は、それを設計に反映する技術と実績を兼ね備えていた。「我々はその理想のかたちをトレースするだけでした。こちらが提案したプランや素材を選び取る判断は、Iさんご夫妻は的確で迅速だったと思います」と住まい設計工房社長の蘇理裕司さんは振り返る。まさにプロフェッショナル同士がコラボレーションするようなあうんの呼吸で、プランニングはスムーズに進んだという。「無駄な線を可能な限り排除して、白で統一されたミニマルなLDKが耐震等級3を叶えつつ、実現できたのがうれしいです」と奥さま。
1日の多くの時間を過ごすLDK、そして競技に挑むほど熱中しているご夫婦共通の趣味、ビリヤード台を置く趣味室という2つの大空間は不可欠だった。「この2つの空間は、各フロアの半分以上の面積を占めるのは明らかでした。そこで壁や柱に邪魔されない広々とした大空間を木造建築で叶えるには、やはりSE構法がマストでした」と蘇理さん。趣味室は重量のあるビリヤード台を確実に支えるための床補強、競技に集中できる照明など、細かい部分を調整した。白い壁を大きなスクリーンとしてホームシアターとしても活用し、家族やゲストが集う場所でもある。中庭に面した2階リビングのすっきりとした大開口は、緻密に計算し、丁寧な施工により、無駄な線が排除されて空間のノイズにならないようミニマルなデザインに仕上げた。ディテールも妥協せず、現場でも丁寧な施工を追求し、無駄をそぎ落とした空間。さらにゲストを迎える玄関ホールもギャラリーと錯覚するほど整然として美しい。宙に浮かせた片持ち階段は、さながら現代アートのように存在している。
I邸のように非日常的ともいえる端正さを、快適に生活しながら保つコツは、「見せる」スペースと「隠す」スペースのメリハリをつけることだという。キッチンダイニングの北側の壁をすべて壁面収納とし、デスクも扉の奥に造作するなど、生活するうえで必要な機能はすべて隠す工夫も奥さまからの提案。規格外の広さのW.I.C.をファミリークローゼットとして家族全員のワードローブも一括にまとめた。土間収納も広くとり、奥にはご主人の書斎に活用できるよう作業台も造作。家の各所に各自が作業に集中できる居場所がある。寝室や子供室などがコンパクトでも、ストレスを感じないのは、このプランニングによるところが大きい。
また、ゲストも集うLDKや趣味室などのパブリックな空間と、寝室や浴室のようなプライベートな空間にもメリハリをつけた。寝室や浴室は必要最小限に。一方で中庭に接する開口部を大きくとり、ここでも外部に延長しているかのような視覚効果で実際よりも広く見せている。外部へと続いていくような開放感、閉塞感のない白一色のLDK、中庭の緑鮮やかなシンボルツリー。そのバランス感覚は絶妙だ。
研ぎ澄まされた静謐さのある空間に対し、中庭の緑鮮やかな生き生きとしたシンボルツリー。この静と動の対比が、I邸の住まいと暮らしを日々豊かに彩っている。
取材・文/間庭典子
I邸
設計施工 | 住まい設計工房 | 所在地 | 大阪府寝屋川市 |
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家族構成 | 夫婦+子供1人 | 敷地面積 | 206.65㎡ |
延床面積 | 138.44㎡ | 構法 | 木造SE構法 |