心地よい時間を過ごす広がりのあるリビングルーム


薪ストーブはデンマークのライス社製。どのアングルからも炎が眺められるよう火室部分は回転式。ドアを閉めるだけで最適な燃焼を自動で調整。

2階の動線やキャットウォークを通常より広くとることで生まれたセカンドリビング。緑に囲まれ、読書や趣味などの時間を楽しむ憩いの空間となった。

家事効率を第一に考えたダイニングキッチン。母屋との行き来を考え、勝手口や水回りを西側に配置。リビングとの境は目隠しともなる塗り壁で区切り、大空間のアクセントに。家の中心には収納や作業台を兼ねたマルチカウンターを設けた。

ダイニングを囲むような変則的な鍵型キッチン。限られた空間を有効に活用。

調理中や食事をする際にはテラスや庭が視界に入り、心が安らぐ。

南面の庭が母屋へのアプローチと面しているため、テラスの前を木の壁で囲むように目隠しした。日本庭園の中にプライベートガーデンを造園するという発想。この塀はハンモックを吊るす支えとしての役目も。

庭を望むキャットウォーク。セカンドリビングにはグリーンを並べて、2階でもコンセプトの「緑と暮らす家~Garden in Garden~」が実現。

1.動線を広く確保して、ゆったりとした空間に見せたエントランス。手前にシューズケース、奥にS.I.C.を配した。/2.ドレッサーを兼ねた洗面台は、2人で同時に使えるよう広めのカウンターになっている。

3.就寝時に過ごすだけの寝室はコンパクトに。グレージュの壁紙でまとめ、照明を生かして落ち着いた空間に仕上げた。/4.母屋の庭に面した南側。2階にも大きな開口を設けて、テレビ台を設置。リラックスできるチェアを置き、一人での時間をゆったり過ごせるコーナーになっている。

5.母屋にアクセスする勝手口には、食材や日用品をストックするためのパントリーを設けて家事動線に配慮。/6.ロードバイクのレースにも出場するというSさんが自転車のメンテナンス、トレーニングをするための趣味室。独立したお子さんが滞在するときにはここを寝室にしている。趣味室と南側の寝室はいずれ壁を取り払って一つの部屋にリノベーションすることも可能。

もともとは母屋の一部だったところに別棟を建てたS邸。木の塀で囲むことにより、既存の庭園内に自分たちだけのプライベートガーデンも実現した。
リビングとテラス、庭をつなぐスマートな薪ストーブ
大家族で暮らす家から
ふたりの時間を楽しむ空間へシフト
もともと敷地内に立つ母屋に、親と子供との三世代で同居していたSさん夫妻。子供が独立したことを機に、母屋と棟続きのように隣接する別邸を新築することにした。コンセプトは、「緑と暮らす家~Garden in Garden~」。既存の日本庭園を生かしつつも、夫婦専用のプライベートガーデンやテラスを設けて過ごせる場所に。また、室内の各所にもグリーンを配し、緑に包まれて暮らせるよう、広く、ゆるやかな動線とした。
天井高5.35mのリビングは、テラスや庭、吹き抜けに面した2階のセカンドリビングへと拡張されるように広がり、大空間全体がS邸のリビングのような演出。LDKはテラスや庭を囲むL字型であるため、常に明るく、ヌケが感じられる。さらに奥には勝手口を設けて、母屋とも行き来がしやすいプランになっている。また、2階へ移動すると、グリーンに囲まれたセカンドリビングが。ここは限られた空間を有効に活用するため、寝室や趣味室などのプライベートな部屋へアクセスする動線上にある。この場所がもうひとつのリビングとして有効に活用されている。
「家にいる時間が長くなることで、皆でくつろぐ大空間の他に、各々がひとりの時間を過ごすスペースづくりがますます必要になってくると思います。例えば、ダイニングとリビングのスペースをひとつにまとめる。すると、新たに個人が楽しめる場所をつくり出すことができますね。端末で動画を見たり、ちょっと作業することなどを考慮して動線上にデスクを設けるなど、住空間の中で個々の居場所を複数設けるのは、とても大切なことです」と設計したアーキレーベル 鈴木組の鈴木留美子さん。S邸でも、このような日常を豊かにしてくれる個人のための場が各所に存在する。
“庭の中に庭を築く”という発想で
プライベートガーデンが実現
「植物を育て、囲まれて暮らし、夏はハンモックで昼寝、冬は薪ストーブの炎を眺めたいと思っています」とSさん。子育てを卒業した夫妻のライフスタイルは、動から静へとシフトしたように伺える。その拠点となるのが、テラスとプライベートガーデン。「テラスのある南側は母屋へとつながるアプローチであり、同じ敷地内なので遮るものはありません。そこでテラスはあえて塀で囲み、母屋の日本庭園とは違ったイメージのプライベートガーデンを提案しました」と鈴木さん。室内は薪ストーブ周辺の床を大判のタイル貼りに。そのつながりで玄関まわりから中庭まで同じタイルを使用して、空間の広がりやまとまりを演出した。
持続可能な住まいを目指し
フレキシブルな家を提案
「世界的にサステナブルがうたわれる今、『ものをつくる』立場として、持続可能な住宅を目指しています」と鈴木さん。人々の暮らしは日々変わり、現時点で選んだスタイルが30年後も良しとされるとは限らない。家族構成も変化していくと実感している。 さらに 「建物の骨格は変わらずとも、ライフスタイルに合わせて空間の仕切り直しができる、スケルトンインフィルの考え方に共感します」とも語る。だからこそ、このS邸のように現在の暮らしや快適性を考慮して設計しつつも、間仕切りが自由にできるエリアを用意して「その後」に備え、フレキシブルな“余白”のある住宅をつくる──。「重量木骨の家は、ライフスタイルに合わせて、空間を最大限に利用する、未来への設計をかなえてくれます」。
取材・文/間庭典子
S邸
設計施工 | アーキレーベル 鈴木組 | 所在地 | 新潟県新潟市 |
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家族構成 | 夫婦 | 敷地面積 | 365.81㎡ |
延床面積 | 123.80㎡ | 構法 | 木造SE構法 |