猫と人とが共に暮らし、 それぞれの世界を築く空間


サンルームの壁には猫たちが自由に遊べるキャットステップを設置。一番上の穴からリビング天井部分のキャットウォークへ抜けられる仕組み。

LDKとサンルームがある2階は猫と住み手が一緒にリラックスできる。3階の南面の窓からLDK全体に太陽光が降り注ぎ、日中は常に明るい。

ガラスの扉を開いたサンルームとリビングは段差もなくシームレスだが、グレーの大判タイルにすることで、室外で過ごすような空間にした。

深みのあるグレーでまとめたシンプルシックなキッチン。壁面収納を充実させ、食器や調理器具はすべて収められるように計画。そのため、好きなものを並べ、ディスプレーする見せる収納を楽しめるようになった。

キッチンとラインを合わせたダイニングテーブル。直線に並べたダウンライトなど、奥行きを感じさせる演出でより広々と。床はニッシンイクスの複合フローリングを選択。

2階のLDKへは、軽やかさのあるスケルトン階段を採用。無垢材やグレーを基調としたやわらかな空間を、硬質な黒のスチールが引き締める。

3階のフリースペースは、セカンドリビングのような場所。ガラス板の下はサンルーム。見通せるが、猫ごとに動線は完全に分けられている。

エントランスとオフィスの窓を同じライン上にして直線を強調。圧迫感が出ないよう、シューズクローゼットの下や書棚の上にヌケをつくった。

モノトーンで抑えた空間だからこそ、デザイン性のある小物が映える。部屋の各所に猫のオブジェやモチーフが。

1.寝室の奥は、自宅で漫画喫茶気分を楽しめるゆったりとしたチェアを置いたコミックコーナー。蔵書の数に合わせて壁一面を書棚に。/2.浴室から脱衣所、ランドリーまで一直線上に並んでいる。奥はウォークインクローゼットにつながる効率のよい家事動線。

寝室の正面から見るとコミックコーナーの様子はまったくわからない。隠し部屋のような楽しさがあるのと同時に、立体的に見せる効果も。あえてこもる場所にした。

3.玄関を抜けた階段前の壁はダークグレーでギャラリー風の空間に。/4.京都の厳しい景観条例を守るべく、庇を出しながらも、モダンで重厚感のある外観に仕上げている。
猫といっしょに遊び、くつろぐキャットフレンドリーなLDK
人間と猫の領域、オンとオフを
明確に分けることで快適に
京都市のM邸は猫と人間がリラックスして暮らせるストレスフリーな住宅。猫と人間、お互いの存在が気にならないように、3つのフロアは完全に住み分けられている。1階は人間のためのフロア。浴槽やランドリー、Mさん夫妻のワードローブがすべて収まるクローゼット、オフィスを設けた。「1階には猫は入れないので、衣服に毛がつく心配もありません」とMさん。仕事場とプライベートな空間を区別する意味もあり、オフィスは玄関脇に位置する土間続きに。宅急便も受け取れて、玄関を通さずに来客との打ち合わせも行える。室内でありながら「離れ」のような距離感があり、それぞれが集中して活動できるスペース。グラフィックデザイナーとして活躍する奥さまと、横に並んで作業することも多いそう。
2階は猫と住み手が共存するリラックス空間。LDKや寝室、サンルームなどがある。「タイコーアーキテクトのショールームで見たサンルームが印象的で、そのイメージのまま設計していただきました」と奥さま。自然光の中で過ごせるサンルームは、ヨガやトレーニングをするプライベートジムとしても活用。もちろん猫たちにとっても格好の遊び場だ。「外の風景を見渡せる窓際にはキャットステップやキャットウォークを設けて猫たちが自由に歩き回れるようにしました」と奥さま。
3階は猫たちのための空間に。床も猫たちが歩きやすく、傷がつきにくい素材に変えた。「実は2階に住む猫と相性の悪い猫がいて、喧嘩をしてしまうので、それぞれの空間で生活できるようにしているんです」と奥さま。2階と3階の吹き抜けの間はガラスの板で仕切っており、光は通るが、お互い行き来できないよう工夫されている。吹き抜けに面した3階のフリースペースには、LDKを見渡せるカウンターデスクを造作した。
奥行きのある敷地を生かしつつ
吹抜けで広がりと明るさを確保
約37坪の敷地は間口約5.2m、奥行き23mのいわゆるウナギの寝床、典型的な京都の町家だ。柱や壁で遮らず、東西の端まで見渡せるよう心掛けるなど、奥行きのある土地をうまく生かした間取りになっている。伝統的な町家では坪庭を設けてそこから採光することが多いが、M邸では2階のリビングを吹抜けにし、3階南側に窓を設けることで、リビングやサンルームに太陽の光を取り込んだ。「視線が上下にも抜けることで、奥行きだけでなく、広がりも感じられるのびやかな空間になりました」とタイコーアーキテクトで設計担当の前田 良さんは語る。視界を遮るような家具を置かず、壁面収納を充実させたことも成功の秘訣。直線のラインが強調され、より奥行きを感じる視覚効果も発揮。「LDKのライン状に設けたダウンライトなど、照明によってさらに上質な雰囲気を生み出しています」と前田さん。
素材や照明、趣味のスペースで
さらなるオリジナリティを
モノトーンでまとめたシンプルモダンな空間は、壁面の素材感や照明、そして機能でオリジナリティをプラスしている。猫たちのための抜け道やプレイコーナーもユニークだが、寝室の裏にもあっと驚く仕掛けが。「漫画喫茶のこもった空間が好きで、壁面を書棚にして好きなコミックを並べ、自宅でもそんな気分で過ごせるコーナーにしてみたんです」とMさん。自分だけの居心地の良さを追求した結果、猫たちと住み手が、それぞれの世界で気ままに過ごせる空間となった。
取材・文/間庭典子
M邸
設計施工 | タイコーアーキテクト | 所在地 | 京都府京都市 |
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家族構成 | 夫婦+猫 | 敷地面積 | 122.42㎡ |
延床面積 | 191.27㎡ | 構法 | 木造SE構法 |