住み手の感性を引き出す上質な木のキャンバス


玄関からはウッドデッキのある庭まで見通せる。H邸のミニチュアのような郵便ポストはミューズの家が造作。一軒ごと玄関に合わせてデザインしている。

奥さまの要望により、工事に入る直前に設計変更したという出窓は小さなギャラリーのような空間として活用。木漏れ日の注ぐ中庭の眺めが心地よい。

リビングとワンフロアでつながるウッドデッキ。対するダイニングはあえてリビングと段差をつけている。天井の素材は壁と同じく左官仕上げ、さらに奥はシナ合板にして変化のある空間にした。

H邸の敷地は南側にせり出したような変形地。緑の多いこの部分をウッドデッキにし、隣に生い茂る緑の風景となじませた。浴室からもこの緑を望める。

出窓と造作したキャビネットの上はギャラリーとして活用している。浴室やトイレに続く廊下には地窓をとり、坪庭の緑を見せた。キャビネットの上に飾ったアート「untitled」作家名:松丸真江 W1000×H800㎜(アートギャラリークローゼット)

1.リビングの天井は構造材をあえてあらわしとして変化をつけている。天井をより高くとり、広く見せる効果も。/2.風合いのある左官仕上げの壁もH邸の魅力の一つ。熟練した技をもつ職人に依頼した。

3.玄関回りも左官仕上げに。落ち着きと風格を感じられるエントランスとなった。/4.玄関は広くとり、柱を介して左はS.I.C.としている。階段の下のスペースを生かした納戸でもある。リビングへの動線は扉や壁で仕切らずに、そのまま緑の空間へと抜けるようにした。

左官仕上げの腰壁で囲み、手元を隠したキッチン。キャビネットは軽やかさのある白木を選んだ。左手奥はパントリー。掃除機や調理器具なども収納し、すっきりと機能的なキッチンを保っている。

文化を感じる歴史ある住宅地になじむ、落ち着いた色調の外観。南に開いた庭があるため、道路に面した北側は必要最低限な窓だけを配した。

開放感のある浴室は、Hさんの要望。中庭を挟んで森のような借景も望めるリゾート感覚の空間に。
蔦の絡まる隣家の借景を生かしたウッドデッキ
土地の魅力、そして住み手の感性を
最大限に引き出すキャンバスの家
「『この土地の魅力を最大限に生かす家にしてほしい』というHさんの一言で始まり、ことあるごとにこの言葉に立ち返り、進めていった家づくりでしたね」とミューズの家の藤本卓也さんは振り返る。南側の敷地のラインは真っすぐではなく、その部分だけまるで角が映えたように突き出している不思議な変形地。そして南側の隣地は森のような緑の世界──。「そこで敷地内にも樹木を植えて緑をつなぎ、森の中に飛び込んでいくようなデッキとバルコニーを設けるプランを提案しました」と藤本さん。一方ではその森を引き込むかのように建物をくぼませて、まるで森林浴をしながら生活しているような空間が完成した。窓はこの庭とリンクするかのように、できるだけ大きくしたり、森をのぞき見るようなイメージの出窓にし、緑がいつも身近に感じられるようにした。「心地よい時間が、ゆるやかに流れていくような家です」と藤本さんは語る。まるで避暑地の山荘のようなすがすがしさと、木々に包まれた安心感がある。
庭に面したLDKの壁や天井は、珪藻土の左官仕上げにした。少し荒々しさのある素材感にすることで、内部ではあるが外部の一部のような感覚になり、より庭とのつながりを感じられる。ダイニングの壁や階段回りは軽やかなシナ合板に。「木の箱を組み合わせたようなデザインにしました」と藤本さん。シンプルを極めた内観にはアートを飾ったり、自由に彩られるキャンバスのような空間。ダイニングの出窓は中庭の緑と季節の花や雑貨とのコーディネートを楽しむギャラリーだ。住み手の感性により、幾通りものイメージが広がる。
耐震に対する絶大な信頼と自由さ
そのソフトとハードを両立
「家づくりにあたって、さまざまな会社の資料を取り寄せました」と語るHさん。施工例は思い描いたイメージに近く、好感ももてたのだが、耐震に対する質問に明確に答えられなかったり、ブランド力や信頼性はあってもなにか物足りない大手メーカーも多かった。「決められたパーツから選ぶだけでは建て売りと変わらないですものね。すでにこの土地の購入を決めていたので、ここを生かす設計者を探していたんです」とHさん。そこで「耐震」をキーワードにインターネットで検索し、ミューズの家に出合った。思いつくままに伝えた希望をくみ取り、かつ敷地を生かしたプランを見たとき、瞬時に「これだ」と納得。耐震だけでなく気密性やメンテナンスなど、持続的な暮らしのための機能をわかりやすく解説してくれたのも決め手だった。「とにかく自由に、楽しそうに提案してくれるのが印象的でした」とHさん。一緒につくり上げる高揚感があったという。
生活を豊かにするくつろげる空間、
パートナーの支えでそれが可能に
「私たちが求めていたのは豪華さではなく、落ち着き。温泉気分になれる緑を望む浴室や、旅館を思わせる玄関アプローチ、キャンプ場のような緑に囲まれたウッドデッキなど、くつろげる場所を目指しました」とHさんは語る。家にいるだけで家族で楽しい、家で過ごすことが娯楽になる──。それがなによりもの贅沢だと悟った。この夏はウッドデッキでBBQを楽しむなど、外で過ごす時間も多かったという。「まずは躯体をしっかりとつくり、安心・安全を確保する。そのうえで住み手の思いをともに奏でるのがミューズの家のコンセプトです」と藤本さん。良心的な工務店は家づくりの心強いパートナーとなる好例である。
取材・文/間庭典子
H邸
設計施工 | ミューズの家 | 所在地 | 東京都調布市 |
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家族構成 | 夫婦+子供2人 | 敷地面積 | 128.46㎡ |
延床面積 | 99.41㎡ | 構法 | 木造SE構法 |