里山暮らしを味わう嵯峨嵐山の山荘


嵐山の山々が望めるピクチャーウインドー。ダイニングの吹き抜けを介し、二重窓のようになり、遠くまで抜けを感じられる窓。室温も快適に保てる。

1.8m×4.5mのコンパクトな吹き抜けがもたらすアーティスティックな空間。テラスとシームレスにつながる開放的なダイニングは風が通り心地よい。

嵐山に向き合う形で眺めることができるピクチャーウインドーのある2階の寝室。窓際には限られた空間を有効に活用するカウンターを造作。構造部分の梁をあえて残し、壁の一面をグレーベージュの壁紙にして変化を出した。

書斎を兼ねた2階の和室。長時間、机に向かっても疲れない掘りごたつのようなつくりに設計。窓の配置を伝統的な和室では珍しい高い位置に配して、モダンな印象に。

壁面のアートは香港出身の奥さまが自分の感性で素材を集め、構成した作品。階段に接する壁はスライドで開閉できるようにし、シーンに合わせて調整している。

南と西が2面開口になっている緑がまぶしい浴室。露天風呂感覚で過ごせる伸び伸びとした空間。

1.LDK空間にダイニングとリビングを無理に収めるよりも、ゲストを招いた場合にもみんなでくつろげるダイニングを優先したそう。テラスと一体化し、ゆったりと食事を楽しむための場に。家具はウォールナットの床に合わせて、木のぬくもりを感じる無垢材と硬質な黒を組み合わせた。/2.サブリビングとして階段下の空間を活用。中庭を眺めながら読書を楽しむなど、ちょっとした時間を過ごせるコーナーに。ダイニングやリビングの定位置にとどまることなく、家の各所に「居場所」があるようなレイアウトにした。

3.玄関前のソファから見た中庭。ウッドデッキは縁側の役目を果たす。/4.景観を守るさまざまな条例がある古都、京都。実績のある住まい設計工房により、モダンな外観でありながら、歴史ある町並みになじむデザインに。

公道に面した北側に庭代わりのテラスを配し、住居との距離をとった。外からも中からもお互いの様子があまり見えないようにルーバーの隙間を調整し、落ち着ける空間にした。
梁や柱、格子をあしらった古民家風空間をモダンに昇華
里山暮らしと都の洗練を
同時に楽しむモダンな空間
「山の奥深くで自然に囲まれた暮らしがしたかったんですよ」と語るKさん。世界各国で暮らした経験があり、現在も香港を拠点にしているが、憧れの京都に住むことに決め、里山暮らしができる山荘を嵯峨嵐山に新築した。五山送り火でおなじみの大文字の山がテラスや寝室から仰げる「山の京都」への玄関口だ。「当初はもっと山奥も視野に入れていたのですが、実際に住むと京都の中心街へのアクセスも良いこのエリアは便利ですね」とKさん。K邸は里山の素朴さと、都の洗練を同時に楽しめる住まいである。
古民家の梁や柱のような構造部分をあえて見せ、南北に長い敷地には坪庭のようなスペースを設けて陽の光を取り込むなど、京の町家の知恵を取り入れた。圧巻なのは全開式のテラス。ダイニングに座ると嵯峨の山々の風景が目の前に広がる。北側の吹き抜けから採光もでき、風が通り抜けて心地いい。「食卓で過ごす時間が長いので、無理にLDKとして収めるより、階段の下のスペースをサブリビングとして、ダイニングの広さを優先させました」とKさんは語る。中庭の奥をゲストルームを兼ねたリビングとして、民芸家具やヴィンテージの建具などを合わせて、こもるのに最適な空間にした。
クリエイティブな居住空間は
香港出身の奥さまのアイデア
2階の寝室も山々を望める開放的な間取りだ。山側にピクチャーウインドウを設け、吹き抜けを介して眺められるプランに。階段に面した壁は全面を引き戸にし、開放すると東側の開口部から朝日が差し込む。北の窓際にはカウンターを造作し、朝夕の絶景を楽しめるようにプランニング。「寝室も同じく構造を見せて天井をより高く。一面にはグレーベージュの壁紙を選び、奥行きを感じる空間構成を意識しました」と設計を担当した住まい設計工房の蘇理裕司社長は語る。
へッドボードのように見える枕元の壁面に飾られた立体的なオブジェは香港出身の奥さまが自ら制作。「香港ではアパートメントもスケルトンで購入・借りることが多く、壁やライトなどの内装を自分で手掛けることも多いんです」と奥さま。このオブジェのパーツも香港の内装店で手に入れ、運んできたのだそう。そのセンスを生かして、キッチンカウンターやリビングも機能的で個性のあるデザインとなった。
2階の南側に配した和室は書斎を兼ねた落ち着きのある空間。長く机に向かっても疲れないよう、掘りごたつのようにデスクの下を深くし、手元には自然光が当たるよう前面を開口とした。注文住宅なら既成概念にとらわれることなく、好みやライフスタイルに合わせ、細部まで調整できる。
雪の日も雨の日も心地よく
家で過ごすのが娯楽になる家
冬は芯から冷え込む嵐山だが、断熱材や機能性の高い窓などの性能と、エアコン1台で室温を保つ全館空調との相乗効果で廊下や玄関も暖かい。桜や紅葉の季節だけでなく、木枯らしや雪景色にさえ風情がある。「雨の日の景色もきれいなんですよ。天候が悪い日でも家で過ごすこと自体が楽しいので苦になりません」とKさんは笑う。気候のいい時期には山歩きを楽しみ、近隣の山はほぼ踏破しつつあるそう。自然と親しくなれ、家で過ごすぜいたくも満喫できる山荘。そんな理想の暮らしが立地を生かした間取りと、最新技術とデザインを極めることにより実現している。
取材・文/間庭典子
K邸
設計施工 | 住まい設計工房 | 所在地 | 京都府京都市 |
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家族構成 | 夫婦 | 敷地面積 | 226.60㎡ |
延床面積 | 105.47㎡ | 構法 | 木造SE構法 |