カフェスペースから光を取り込むL字型のLDK


LDKに面したテラスをカフェスペースに。グレーで統一し、高い塀で外部を遮断した無機質な空間にシンボルツリーの緑と、さわやかな青空が映える。

玄関扉の正面はあえて光を通すガラス素材にし、グリーンでさりげなく目隠し。隣家に接した南側は高い位置にだけ開口を設け、視線を気にせぬ環境に。

L字型や吹き抜けの効果により、縦にも横にも奥行きを感じるLDK。床は丈夫でメンテナンスがしやすい12㎜幅の複合フローリング材を採用。

システムキッチンはLIXILのリシェルSIオープンを選んだ。食器を収納するキャビネットは黒、北側の壁も一面グレーにして全体を引き締めた。

昼間は照明が不要なほど明るいダイニングは食事に限らず、くつろぎ、勉強や作業を楽しく進められる快適な居場所にした。壁には小さなテレビを設置。

床座でもくつろげるようにソファでなく、手軽に移動できる天童木工のチェアを採用。マスタードイエローのビーズクッションをアクセントに効かせて。

1.階段下のスペースを活用したワークスペース。圧迫感のないシンプルな家具を選び、さわやかに。/2.ダイニングの食材や料理をおいしそうに見せるテラスからの自然光。

吹き抜けを介してLDKとつながるファミリースペースにはピアノを置き、書棚を造作した。レッスンや読書に集中しても、リビングにいる家族と距離を保て、それぞれの時間を過ごせる。

将来は2部屋に分けることを想定し、左右対称なデザインの子供室。家族全員で寝ている現在は、開放的な遊び場。子供の視線で窓を眺めると、山々が望める。

グレーを基調としたシンプルモダンな外観。道路側には植栽を施し、玄関先も季節が感じられ、アプローチの足元を彩る草花を添えられるようデザインされた。
南東から朝の光が注ぐ、朗らかなリビング空間
光と風を取り込む装置として
機能しているタイルテラス
S邸の南東に配したのはタイルテラスのカフェスペース。バーベキューで盛り上がったり、子供たちがプールで遊べるゆったりした空間である。設計を担当したMstyle houseの酒井良子さんは、このテラスをL字で囲むLDKのプランをSさんに提案。「便利な立地で、住宅が隣接したエリアでもあるので、お互いの視線が交錯しないよう、約3mの自立壁で囲みました」と酒井さん。テラスの側溝の目隠しとして、小石を自立壁の周囲に敷き詰めた。そして酒井さんは「プライバシーを守りつつも、大きな吹き抜けと開放感のある開口は確保して、耐震や気密性など性能も重視したいというご要望でしたので、木造でも一棟一棟、構造計算が義務付けられ、強度を数値化できるSE構法をおすすめしました」と語る。カフェスペースへの大開口とリビング全体の吹き抜けから光と風が入り、換気にも優れた心地よいLDKとなった。また、吹き抜けのある南側には高い位置に窓を設け、採光を確保している。
大空間とそれぞれの居場所
そのメリハリで空間を有効活用
贅沢な46.2㎡のカフェスペースを含め、S邸のほとんどを占めるのはLDK。寝室やW.I.C.などのプライベートな場所は2階の奥にまとめられている。メリハリを利かせた思い切りのいい空間の使い方といえる。吹き抜けを囲むような廊下の一部に設けた書棚のあるファミリースペースや、階段下のワークスぺースなど、LDKに接した家族共有の空間内にそれぞれが心地よく過ごせる居場所を分散させている。
リビングには存在感のあるソファを置かずに、あえて軽やかな天童木工のパーソナルチェアを選び、のびのびとしたL字型LDKをさらに広く見せている。玄関を入ってすぐの正面の仕切りはあえて透明のガラス戸を造作。選び抜かれた家具が引き立つLDKが実現した。酒井さんは「S邸では内装や家具も細かく提案させていただきましたが、素材や色を決める際、『僕たちが決めるとバランスが崩れて後悔する。今までの事例を見て信用していますので、酒井さんが決めてください』と全面的に信頼をしていただけて、スムーズに設計、工事が進められました」と振り返る。部分的にシャープな黒のスチールやグレーのタイル仕上げにするなど、軽やかさと重厚感の対比も意識した。トイレの壁に選んだマスタードイエローはS邸のアクセントカラーとし、同系色の小物も各所に配した。シンプルな空間に映えるグリーンも目を和ませ、全体の調和が取れている。
加えて、カフェスペースとして活用しているテラスがもたらすのは、心が安らぐデザインだけではない。ランドリーからそのままアクセスできる家事動線としても機能し、洗濯ものをストレスなく運べるようになっている。LDKは段差がなく、ロボット掃除機が自在に稼働できる。床はタフでメンテナンスがしやすい複合フローリングを選んだ。キッチン収納は、日常的によく使う食器や調理器具を事前に相談して設計している。
ライフスタイルの変化に合わせて
多機能な住まいを提案
「ホテルや店舗と違い、住宅は365日、24時間快適であるべき空間。デザイン性と機能の両立は一番の課題としています」と酒井さん。最近は、家での過ごし方の多様化に伴い、住み手からの要望も多目的化しているという。「まずはどんな生活を目指すのか、自由に夢を語ってください」。
取材・文/間庭典子
S邸
設計施工 | Mstyle house | 所在地 | 長野県長野市 |
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家族構成 | 夫婦+子供1人 | 敷地面積 | 221.72 ㎡ |
延床面積 | 119.66 ㎡ | 構法 | 木造SE構法 |