自然素材のぬくもりに包まれた優しい空間


軽やかな北欧調のダイニングにはルイスポールセンの名作エニグマのライトを。床は厚さ30㎜、自然のままの節を生かした無垢杉フローリングを採用。

吹き抜けの大開口から日の光が差し込むLDK。階段下には地窓を設け、あらゆる角度から採光を実現した。リビングの天井はレッドシダーの板張りに。

設備配管のためのPSを囲んだ大谷石は、大空間のポイント。白や無垢材を基調とした空間に石やタイルなどの存在感のある素材が美しい対比に。キッチンの棚はあえてオープンにし、見せる収納を楽しんでいる。

ジオメトリックに貼ったタイルでモダンに仕上げた洗面スペース。高窓から光が注ぎ、日中は常に明るい。真ちゅうのランプなどはインテリアが好きな奥さまがセレクトしたもの。浴室はガラス張りにして、広さを感じる空間に。

1.LDKの奥の部屋への引き戸は開放が可能で、ビンテージのテーブルに季節を感じるディスプレイでゲストの目を楽しませる。/2.庭に寄り添うようなレイアウトのダイニング。新緑や紅葉など、木々の変化を通じて季節を感じられる。

階段からはLDK全体を見渡せる。10畳もの広さの吹き抜けの大空間を快適に保つため、パッシブ冷暖で全館空調を導入。通気口も木製のカバーを選び、上から見ても違和感のないように。縁側や隣の住宅との目隠しにする木の塀も無垢材で目に優しく。ノイエスのソファやアルネ・ヤコブセンのスパンレッグテーブル、セブンチェアなどの名作家具が空間に溶け込む。

キッチン前のオフィスコーナーはPSの柱が陰になり、LDKの中でさりげなくゾーニングすることに成功している。

大学生の娘さんの部屋は一面だけ壁紙の色を変えてアクセントに。勾配天井が屋根裏部屋のようでかわいらしい。

3.玄関から最初に目に入るリビング。杉の床とレッドシダーの天井無垢材に囲まれ、ナチュラルな空間となった。正面の大開口から緑に包まれた庭も望める。/4.LDK奥に位置する奥さまの寝室はベンチのように使える小上がりを設計。日中は愛犬が日なたぼっこをすることも多いそう。

閑静な高級住宅街になじむ落ち着いたカラーリングの外観。庭側に大きく開いた間取りのため、道路側の窓は必要最低限に絞り、プライバシーを確保した。
漆喰の壁や無垢材、大谷石などさまざまな天然素材が調和
間口が広い立地を生かす
南から光を取り込む間取り
T邸が立つのは上甲東園の高台にある住宅地。敷地間口約14m、奥行き約16mの高低差がほぼない恵まれた立地だった。道路に面した北側には駐車スペース2台分、南側に間口いっぱいの庭を配し、L字型の形状にした。駐車場脇を玄関口とし、車から降りてすぐにアクセスできる動線だ。
玄関を開くと木のぬくもりを感じるリビング空間に。その奥のダイニングには10畳もの大きさの吹き抜けを設けた。「吹き抜けをつくるのならリビングだろうと思っていたので、最初のプランでダイニングにあったのは意外でした。けれど、設計を担当した千知岩さんが『朝を明るい光の中で過ごすのは気持ちがいいですよ。リビングは落ち着くための空間なので低い天井のほうが適しています』と断言したのが印象的でした」と奥さまは当時を振り返る。要望どおりに進めるのではなく、よりよい住まいにするためには妥協を許さないその姿勢は信頼に値したという。「実際に住んでみて、こもるようにつくろげるリビングは落ち着けると実感しました」と奥さま。2階の収納や子供室の扉も無垢材にしようとしたが、白に近いほうがよいとアドバイス。実際、そのほうが軽やかにまとまり、吹き抜けの迫力が増している。
天然素材に包まれる安心感
家族の健康を守る漆喰と木
「フクダ・ロングライフデザインがいい家の基準とするのは耐震性や耐久性はもちろん断熱性や気密性など家の性能、そして経年しても廃れない美しさです」と設計担当の千知岩賢二さんは語る。次世代にも受け継がれる、普遍性をもった機能美を追求したプランニングを提案するために、1年に手掛けるのは12軒までとし、室内の壁と天井は体に優しい素材の漆喰の左官塗りを標準採用。
「天然素材による漆喰には湿度調整機能があるので、湿気を吸収して梅雨時もさらりと快適に。空気が『おいしい』環境を保ちます」と千知岩さん。良質で白度の高い高知産の石灰岩で、室内の接着剤も市販の塗料は使わず、安全と確認できたものだけを使用。漆喰には外から持ち込んでしまった化学物質を吸着分解する働きがあり、シックハウス対策にも有効で、家族の健康を守ってくれる。
T邸のLDKの床には杉、リビング天井にはレッドシダーの無垢材、設備配管のためのPS(パイプスペース)には栃木県産の大谷石を採用。漆喰とともに天然素材に包まれる安心感がある。アルネ・ヤコブセンやポール・ヘニングセンなど、デザイン性の高い家具や照明がなじむ。また無垢材に包まれた空間にはビンテージの家具や真鍮のランプ、キリムなど風合いのあるアイテムも似合う。クリーンなイメージの北欧家具と調和し、ほっとできるインテリアとなった。
エクステリアも天然素材を用い
エネルギーを生かすデザインに
外壁も左官仕上げにし、玄関周りのひさしはデザイン性と機能面を兼ね備えた軒が深いファサードに。門や堀の表面には杉材を型枠にして木目を生かし、時間がたつと風化し、味が出るように仕上げた。塀は道路からの視線を植栽を介してさりげなく遮り、駐輪・室外機の目隠しにもなっている。吹き抜けにより冬場でも大量の日射取得が可能であり、その分、窓が少なく、外皮面積に対して開口部が10%以下に抑えられている。このおかげで窓からの熱損失が減り、光熱費も抑えられているなど家計にも優しい。環境を考慮した、自然の力を最大限に活用する住まいだ。
取材・文/間庭典子
T邸
設計施工 | フクダ・ロングライフデザイン | 所在地 | 兵庫県西宮市 |
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家族構成 | 夫婦+子供2人+犬 | 敷地面積 | 228.27㎡ |
延床面積 | 145.10㎡ | 構法 | 木造SE構法 |