スペースエイジ気分のモダンなガレージハウス


マットな質感のシルバー1色でまとめた箱形のシンプルな外観。壁面のストライプや長細い窓がよりモダンさを強調している。エントランスの天井やポストにはイエローを差し色にしてアクセントに。

「イームズシェルチェア」や「コンポニビリ」など、ミッドセンチュリーの家具が映える2階の寝室。書斎やオーディオルームとしても活用している。

ダイニングと床の素材を変え、段差をつけることでゾーニングしたリビング。階段の無垢材や天窓からの陽光も加わり、全体的に温かみのある印象に。

夫婦それぞれ専用の洗面台を線対称に並べたスペース。サンワカンパニーの機能的な洗面台に、アクセサリーを合わせて、スページエイジ風にまとめた。

無機質になりがちな白いダイニングに、ビタミンカラーのチェアやイケアの球体形ペンダントライトで曲線をプラス。ポップで爽やかながら、どこか宇宙的な雰囲気が漂う空間にまとめた。

入り口から見たLDKの全体像。右上にあるルーバーのようなアルミが、Iさん自ら取り付けた可動式の室内物干し。

物干しがリフトで2階まで上げられた状態。市販の柵を利用して、リモコンで上下階に洗濯物を運べるよう工夫した。
音楽に身をゆだねて無になれる白い空間
作業したり趣味も楽しめる
ビルトインガレージ
「車を収めるだけでなく、作業が楽しくなるビルトインガレージにしたかったんです」と語るIさんのお宅は、次世代型のガレージハウス。壁材をあえてむき出しにし、外装はガルバリウム鋼板を使って、内部の木材と外装の白やシルバーを対比させた。天気のいい日は、車2台やバイクを駐車できる広々としたこの空間で、趣味の時間を過ごすことも。「6×6mの広さのガレージは、柱や間仕切り壁が少なくてすむSE構法ならではの大空間です」と設計を担当したエーティーエム建築の佐藤鉄平さん。近年の地震の多さを懸念していたIさんは、梁の接合部分を強化した耐震性にも引かれ、SE構法を選んだのだそう。
白をベースにビタミンカラーを効かせたLDKは、60~70年代の近未来をイメージさせる空間。チャールズ&レイ・イームズやフィリップ・スタルクやのチェアなどのデザイン家具が置かれ、プラスチックやポリプロピレンのツヤのある素材感を生かしている。「球体のライトやキッチンにあるアイテムなど、実はイケアの手頃なものも多いんですよ」とIさんは笑う。ペンダントライトを3つ連ねるなど、レイアウトの妙でスタイリッシュにまとめた。
デザイン性に富んだ空間が
機能面でも実力を発揮
26.23m²のコンパクトなLDKながらリビングを小上がりのような高床にして、さりげなくゾーニングしているのも特徴だ。「段差があるので座ると子供の目線の高さと合い、絵本を一緒に読めるんです」と奥さま。ゲストも自然とそこに集まり、ベンチのような役割を果たしているのだとか。視覚的な効果だけでなく、機能面で重宝している部分はほかにもある。例えば双子のように並ぶシンメトリーな洗面コーナー。鏡を特注し、洗面ボウルや棚はアールのあるデザインで統一し、クールな空間に。「設計したのは娘がまだ生まれる前。当時は共働きで、朝の慌ただしい時間帯でも 自分のペースで身支度できるように、それぞれの洗面台を設けました」とIさん。その結果、グルーミング用品やコスメもそれぞれ管理できるようになり、整理整頓がしやすくなったという。
また、炊飯器やレンジなどの配線が気にならないよう、Iさん自らが設計し、コードを隠すためのカバーを取り付けた。真っ白な空間を邪魔しない機能性。デザインと住みやすさの融合も、I邸のコンセプトの一つだった。
日常を助けるアイデアも
各所にちりばめ快適に
LDKの脇には、Iさん自慢の洗濯物用リフトを設置。「 梁からアルミ製の柵をつるし、電動式リフトで洗濯物をそのまま2階へ運べるようにしました」とIさん。家事の時短や軽減につながっている。リビングの階段は無垢材と白い蹴込み板を組み合わせて、昇り降りがしやすく、視覚的にも面白いデザインを採用した。
また、モダンなスリット窓からの採光をフォローするため、天窓を2カ所に設置し、明るさと暖かさを取り込んでいる。高床部分の吹き抜けからリビングに光を回しながらも、食べ物が並ぶダイニングには直射日光が当たらないように計算し、料理をおいしく見せるライティングにした。
家全体にさまざまな機能やアイデアが盛り込まれ、毎日をストレスなく快適に過ごすための工夫が満載のI邸。デザインと快適性は共存できる。I邸はそれを証明している。
取材・文/間庭典子
I邸
設計施工 | エーティーエム建築 | 所在地 | 奈良県大和郡山市 |
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家族構成 | 夫婦+子供1人 | 敷地面積 | 162.61m² |
延床面積 | 121.46m² | 構法 | 木造SE構法 |