二つの階段でつながる心弾むガレージとゆとりのLDK


ガレージは前面道路と敷地の関係で現在の位置以外には取れなかったが、制約を逆手にとってガレージを挟んで二つの階段を設ける設計案をつくり上げた。建物の左に回り込むと玄関があり階段で2階LDKに上がる。外壁は黒のガルバリウム鋼板。玄関の壁の一部に木を張って表情を和らげた。

ガレージの横には室内スペースがつながる。ここで荷物のチェックをしながら旅行時には出発の準備をする。荷物の積み下ろしも楽にすることができる。

1.ガレージに続く室内スペースはIさんが収納を造作。山登りの道具類などが整然とまとめられている。/2.ガレージ内にも壁面収納をDIYで制作した。

棚を造作してタイヤをはじめとする道具類も収納。室内に上がれば寝室や水回りなどプライベートスペースが続く。

キッチンで談笑するIさん夫妻。アイランドキッチンは造作。壁はグレーのモルタルで仕上げた。レンジフードのダクトはあえて露出させインテリアのアクセントに。

LDKは端から端まで視線が通る大空間。勾配天井にしてさらに開放感が高められている。公園側に大きく開き光を取り込む。手前の収納もオリジナルで造作。

広いLDKにはいろいろな場所が設けられている。ダイニングとリビングは落ち着いた空間。テラスが正面にある明るいアイランドキッチンまわりとは雰囲気が変わる。奥は将来、子供部屋にすることも考えている。テレビを載せた造作の収納家具は、縦置きにして天板を載せると机になるような寸法に設計。

隣接する公園の緑を満喫するテラス。家に居ながらにしてお花見が楽しめる。

リビングの一角に設けた奥さまの仕事用デスクのあるワークスペース。奥さまはフードカメラマン。撮影後のデータ処理などをここで行っている。

テラスを正面に望む場所にキッチンを設けた。緑の眺めがキッチンでの作業を楽しくする。

3.2階に上がるゲスト用の玄関。段板をつなぐ縦の蹴上げ板をなくして軽快なデザインに。上からの光に導かれるように上階と向かう。/4.LDKと1階のプライベートスペースを結ぶ、もう一つの家族用の階段。

建物の側面に設けた玄関。道路から人の出入りは見えない。正面左に玄関ドアがある。玄関の反対側の木を張ったスペースは収納。屋外で使うものはここにしまう。
ガレージでプライベートとパブリックを分けて、暮らしを楽しむ
スノーボードやキャンプ、登山などアウトドアのレジャーをご夫妻で楽しむIさん。新しい住まいに求めたガレージは、ただ車を入れるだけでなく、さまざまな道具を整然と収納し、積み込む荷物のチェックができるような居住スペースと連続するガレージだった。旅は出かける前がいちばん盛り上がる。今度はあの沢を登ってみようとか、お昼はここでとろうとか…2人でおしゃべりをしながら準備ができたら旅の楽しみはもっと大きくなると考えた。
活動的なIさん夫妻には友人も多い。ガレージを設けることに加えて新しい住まいに望んだのは、大勢が集まってにぎやかに過ごす広々としたLDKがあることだった。そのための土地はすでに確保済み。Iさんは工務店、ハウスメーカー、建築家…家づくりのパートナーを誰にするかを考えた。
「家を建てた人の経験談などを読むなかで、設計と施工は一体のほうが間違いがないと感じて、工務店を中心に探すことにしました」とIさん。インターネットでホープスを見つけ、実際に話をして、この工務店の姿勢に惚れ込んだという。「『ここに最高の家ができたときに、お2人は何をしていたいですか?』と最初に聞かれたので、びっくりしました。他の会社は『ご要望は?』『必要な部屋の数は?』『どんなデザインが好きですか?』といったアンケート調査のようなヒアリングだったからです。ホープスさんは真正面から“どういう人生を送りたいですか”と、問いかけてきた。この会社となら楽しい家づくりができそうだと感じました」。
やがて提案された設計プランはとてもユニークなもので、夫妻はぜひこの家を実現したいと感じたという。特に気に入ったのが、ガレージの両サイドに階段を設けて建物をプライベートスペースとパブリックスペースに明快に分けるという考え方だった。「階段が二つ?」と最初は怪訝そうな表情だったIさんにホープス側はこう説明した。「前面道路からのアプローチの関係で、ガレージは建物の中央から左に寄ったところに設けることになります。そのため向かって左側にどうしても微妙なスペースが残ってしまいます。この解決を考えるなかで浮かんだのが、『階段を二つ設けて空間を分ける』というアイデアでした」。
通常、この規模の都市型の住宅で階段を二つ設けることは考えにくい。しかし、これが夫妻の住まいとして最適なプランを導くものになった。「左端の階段は2階のパブリックスペースに直行するもので、玄関を入ったゲストはこの階段を使って2階のLDKに進みます。一方、ガレージを挟んだ反対側は寝室や水回りのあるプライベートスペースになっていて、2階からもう一つの階段で降りてくるか、ガレージ内からでなければ進めません。その結果、ゾーニングが明確になることによって、動線がすっきりして暮らしやすい住まいになりました。また二つの階段は、建物全体を強固にする構造上のコアになるので、2階のLDKは空間の中に柱も間仕切り壁も露出しない一続きの大空間にすることができました」と、ホープスの設計者はプランと構造の特徴について解説。
住まいにおけるプライオリティを明確に定めてベストなパートナーに出会ったIさん夫妻。その期待に応えた工務店側が提案して設けた二つの階段によって、ガレージを中心にしたアウトドアの楽しみと、リビングでのくつろぎという二つの魅力が存在している。この夫妻ならではのライフスタイルにマッチした住まいが見事に実現した。
取材・文/酒井 新
I邸
設計施工 | ホープス | 所在地 | 東京都世田谷区 |
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家族構成 | 夫婦+子供1人 | 敷地面積 | 438.03㎡ |
延床面積 | 122.55㎡ | 構法 | 木造SE構法 |