北欧テイストが生きるクラフト感のある住まい







北欧テイストが生きる
クラフト感のある住まい
SE構法を生かしたレイアウトを独自の感性で温かな空間に
1階には開放的な吹き抜けのLDKに大きな開口。壁面のアクセントとなる階段を上ると、2階には、寝室、未来の子供室などがL字に並ぶ――のびやかな大空間が映える間取りだ。家に入ったときの印象はシンプルだがクラフト感と温もりがある家。「ほかのどの家とも違う内観にしたかったんです」とご主人。そのために床材も照明も細部にわたって吟味した。
素朴でありながら洗練された北欧風の家が、奥さまの好み。「マリメッコ」の布や食器がよく馴染む空間を実現した。「最初に決めたのはヘリンボーンのフローリングです。このクラシカルな風合いが気に入っています」とご主人。同じ寸法の床材を一定に並べたりゃんこ張りなどに比べて、寄木に張る手間はかかるが、光の反射が一定方向ではない分、奥行きが増す。また気候の変化による乾燥伸縮や膨張にも、木目が同じ方向だけではないので収縮方向が分散されるというメリットがある。また、床にはチーク、壁にはスギなど、さまざまな木材を各所に取り入れている。あえて不揃いにすることで、家全体に寄木細工のような美しい調和が生まれた。ダイニングテーブルに合わせた「セブンチェア」もチェリー、オーク、ウォールナット、エルムとあえてそれぞれ違う木を選択したという。
誰かにとっては規格外でも自分のベストを信じて設計
理想の家は十人十色。「誰かの当たり前が、はたして自分にとっても当たり前なのかをもっと自らに問いかけてほしい」と語るのは設計担当の北爪俊之さん。「平均的な比率や配置ではなくても、住む方のライフスタイルに合っていれば、それが黄金バランスになります」。「ねばならない」を排除すると新しい可能性が生まれる。例えばT邸は玄関の扉を開けるとすぐに畳の間。和室がほしいという奥さまの要望に応えて設けたが、独立した空間ではなく、LDKの一部として開放することで用途が広がった。「休日の午後はここで寝ころび、空を見ながらお昼寝しています」と奥さま。ご主人が過ごすリビングとの距離感も心地いい。フラッシュ戸を閉めればゲストルームとして活用でき、夜は完全に独立したスペースとなる。
造作家具や建具も同様だ。家を建てるときは、既成の概念にとらわれず、自分の感性を信じて、どんどんアイデアを出してほしいと北爪さんは言う。関工務所は118年続く工務店で社員の半数が大工職人だそう。ライフスタイルに合わせた意外性のある造作も得意で、T邸のオフィスコーナーにある印象的な飾り棚もご主人のスケッチをもとに造作したもの。「棚自体がオブジェのような存在感をもつコーナーになりました」とご主人も満足している。
作業効率のいいキッチンが家に笑顔と健康をもたらす
その分、シンプルを極めたのがキッチンスペース。食器や食材などが見えないよう棚を扉でカバーした。キッチンは「キッチンハウス」の「MODA」シリーズに即決。「宙に浮いたような軽やかなデザインにひかれました」と奥さま。キッチンの顔となるレンジフードは「アリアフィーナ」のシリーズ、「アリエッタ」からセレクト。壁に向かって調理するのではなく、太陽の光を感じて、正面のテレビを観ながら楽しく作業できる配置にした。お二人の趣味は料理。ご主人は病院事務、奥さまは保健の先生という健康に向き合う仕事をしていることもあり、栄養や食材には気をつかう。「今までは狭いスペースで同時に作業していたため、動きづらくよく喧嘩していました(笑)。この家で暮らすようになってから、一緒に料理をする時間が楽しくなり、さらにレパートリーが増えましたね」と奥さま。おかげで食卓が以前より華やかになったそう。伸び伸びとしたLDK、作業効率のいいキッチ
ンが、家族の幸福で健康な毎日を支えている。
取材・文 間庭 典子
T邸
設計 | 北爪俊之(関工務所) | 施工 | 関工務所 |
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所在地 | 群馬県前橋市 | 家族構成 | 夫婦+愛犬 |
延床面積 | 129.17㎡ | 構造・構法 | SE構法 |