スキップフロアはメリットだらけ。施工・間取りに注意して後悔なく家を建てよう!
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少しでも収納スペースを多くとりたい、単調なフロアにメリハリをつけたい。そんな時の選択肢として「スキップフロアのある家」はいかがでしょうか。スキップフロアは、空間を縦に活用してユニークな間取りを実現する方法です。
スキップフロアとは?
スキップフロアは、部屋の中で一部の床の高さを変えた場所のことを言います。スキップフロアの間取りにはさまざまな種類があり、1階と2階の間に設ける「中二階」や、床面を一段上げる「小上がり」、床面を一段下げる「ダウンフロア」、半分が地盤面下に埋まっている「半地下」などがあります。小屋裏収納(屋根裏収納)として設けられる「ロフト」も、スキップフロアの一種です。
スキップフロアの間取りタイプ
スキップフロアには、さまざまな種類があります。ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
ロフト
ロフトは一般的に小屋裏収納のことを指しますが、建築基準法における明確な定義はありません。ロフトに限らずスキップフロアを設ける際、「天井高が1.4m以下」「面積が直下のフロアの1/2以下」などの条件を満たせば、延床面積に数えられず固定資産税の対象から外れます。この場合、居住スペースとして使用するには少し窮屈であるため、小屋裏収納であるロフトとしての使用が基本となります。固定資産税の扱いは自治体ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。
中二階
中二階とは、建物の1階と2階の中間に設けられるスペースのことを言います。中二階部分は階数に数えられないため、構造上は2階建ての家ということになります。このため、建物の高さに制限がある地域で、3階建ての家を建てるのが難しい場合でも、2階建ての高さのまま床面積を確保しやすいというメリットがあります。中二階に多く見られる造りとしては、階段の踊り場のスペースを広く取るものなどがあります。
小上がり
小上がりとは、部屋の中に設けられる一段高いスペースのことを言います。30〜40cmほどの高さで作られることが多く、ベンチのように腰を掛けたり、段差の下を収納スペースにしたりして使用できます。小上がりの床はフローリングの場合もありますが、畳敷きも人気があります。リビングの一角に畳の小上がりを設ければ、一つの空間の中で和・洋それぞれの空間を緩やかに分けることができます。
ダウンフロア
ダウンフロアとは、部屋の中に設けられる一段低いスペースのことを言います。一般的に、床面から20〜30cm程度下げて作られます。段差の中にすっぽりと身を収めることができるため、「こもり感」を感じながら、ゆったりとくつろぐことができます。また、床面が低くなる分、天井が高く感じられるため、開放感も得られます。
半地下
半地下はダウンフロアよりもさらに床面が低く、空間の下半分が地盤面下に埋まっているのが特徴です。建築基準法における明確な定義はなく、半地下は地下室と同様に「地階」と表記されます。半地下および地下室は、「住宅として使用されている」「地盤面から天井までの高さが1m以下」「床から天井までの高さの2/3以上が地盤面下にある」という条件を満たせば容積率の計算から外れ、土地を有効に活用しやすくなります。
スキップフロアのメリット
空間を緩やかに区切られる
スキップフロアのメリットの一つは、床の高さに変化をつけることで空間を緩やかに区切れるということ。壁やパーテーションのように空間を完全に遮断することはできませんが、一つの空間を共有しながら、用途に合わせて自然にゾーニングすることができます。完全なプライベート空間とはならないものの、適度な開放感を得ながら居心地よく過ごすことができます。
視覚的に広く見える
スキップフロアには、空間を視覚的に広く見せる効果もあります。壁やパーテーションなどで空間を仕切るとなると、閉塞感や圧迫感が生じることがありますが、スキップフロアではこれらの間仕切りの使用を最小限に抑えることができます。また、段差を生じさせることによって空間に奥行きが生まれ、実際の面積以上の開放感を演出できます。
家族を感じながら生活できる
スキップフロアは間仕切りを使わずに空間を区切るため、家族が互いの存在を感じながら過ごすことができます。視線が遮られないため、家事や仕事をしながら、子どもの様子を見守りやすいというメリットもあります。常に家族を感じられる一方、床の高低差によって視線にずれが生じるため、お互いの適度なプライバシーを守ることもできます。
デザインのアクセントになる
スキップフロアは、空間デザインのアクセントとしても優れています。床の高さを変えて空間を立体的に使うため単調な雰囲気になりにくく、個性的で遊び心のある雰囲気を作ることができます。また、一つの空間の中に複数のスキップフロアを設ければ、場所ごとに目線が変わるため、さまざまな角度から家の中の景色を楽しむことができるでしょう。
段差を収納などに活用できる
スキップフロアをつくれば、段差を生かして収納スペースなどに活用できます。小上がりやダウンフロアなど段差の小さいスキップフロアの場合は、引き出し収納にピッタリ。ロフトや中二階など段差が大きい場合は、ウォークインクローゼットや納戸など、より広い収納スペースを設けることができます。収納以外にも、カウンターや本棚などを造作してワークスペースとして活用することもできます。
高さ制限内でフロアを作りやすい
住宅を建てる際、地域の高さ制限にも注意しなくてはなりません。それぞれの地域は都市計画法によってさまざまな建築規制が設けられていて、高さ制限の厳しい地域では2階建て以上の高さの家が建てられない場合があります。しかし、スキップフロアであれば、階数を増やさずにフロアを増やすことができ、建物の高さと敷地の広さに限りがある中でも床面積を確保することができます。
傾斜地でも建てやすい
スキップフロアは空間を立体的に使うため、段差や斜面のある傾斜地でも建てやすいというメリットがあります。高低差のある地形の場合、土地造成によって地面を平坦にする方法もありますが、手間がかかる上に、地盤が弱くなる可能性もあります。しかし、スキップフロアを設計に上手く取り入れれば、元々の地形を生かしながら、個性的かつ強度の高い住宅を作ることができます。
狭小地でも床面積を確保しやすい
スキップフロアは空間を縦方向に活用するため、床面積を横方向に広げられない狭小地でのプランニングに向いています。また、スキップフロアは間仕切りを使わずに空間を仕切ることができるため、圧迫感や閉塞感を生みにくいというメリットがあります。狭小住宅の場合、家の中に間仕切りが多いと部屋がさらに狭く感じられるため、開放感を持たせながら空間を仕切ることができるスキップフロアとの相性は良いでしょう。
スキップフロアのデメリット
バリアフリー性に欠ける
スキップフロアを作ると段差が生まれるため、バリアフリー性が低くなります。ご家族にご高齢の方や小さなお子さんがいらっしゃる場合は、転倒や転落事故に注意が必要です。安全性と両立しながらスキップフロアを設ける場合は、段差を緩やかにする、スロープや手すりを設ける、といった工夫が必要になります。
掃除の手間がかかる
スキップフロアの段差は、掃除の手間が大きいこともデメリットとなるでしょう。段差を昇降する必要があるため、平坦な床に比べて掃除機を持って移動する際の負担が大きくなります。また、自動走行式の掃除ロボットは段差を移動できないため、使用することができません。対策としては、各フロアに掃除機を用意する、軽量かつコードレスの機種を選ぶ、といった方法が挙げられます。
建築コストがかかる
スキップフロアを作るとなると、床面積が増える分必要な材料が多くなります。その上、構造が複雑であるため施工の手間や期間も増え、建築コストが高くなる傾向にあります。また、スキップフロアを取り入れれば、間仕切りの少ない大空間を作ることができますが、壁や柱といった強固な間仕切りが少なくなる分、耐震性を高めるための補強が必要になり、これによってさらに費用が上がります。
固定資産税が高くなる
スキップフロアで床面積が増えることにより、同じ階数の一般的な住宅と比べて固定資産税が高くなる可能性があります。しかし、先ほど「スキップフロアの間取りタイプ」でお伝えした通り、「天井高が1.4m以下」「面積が直下のフロアの1/2以下」などの条件を満たす場合、床面積に数えられず、固定資産税の対象から外れる場合があります。自治体ごとに条件が異なるため、事前に確認しておきましょう。
スキップフロアを後悔なく作るポイント
断熱・空調に配慮する
スキップフロアによって間仕切りの少ない大空間を作れる一方、冷暖房効率が下がってしまう可能性があります。このため、スキップフロアのある家を建てる際には、断熱性や空調設備の工夫が必要になります。熱が出入りしやすい開口部は特に、断熱性にこだわって建材を選ぶようにしましょう。また、シーリングファンやサーキュレータといった空調設備を取り入れれば、空気循環が生まれ、空調で整えた室温を均一に保つことができます。あるいは、建物全体をまとめて管理できる全館空調もおすすめです。
転落防止対策を講じる
先ほどデメリットの項でもお伝えしましたが、スキップフロアは段差があるため、転落事故のリスクが高まります。スキップフロアの中でも、高い位置に設けられる中二階やロフトの場合は、特に注意が必要です。事故を防ぐためには、転落防止用の柵を取り付け、隙間の大きさや高さについても、適切なサイズで設計しましょう。また、階段に関しても、踏み板に隙間のあるスケルトン階段は、踏み外して怪我をする恐れがあるため、安全性を考慮するなら避けた方が良いでしょう。
将来を見越して設計する
スキップフロアの段差が大きいと、老後の生活が大変になる可能性があります。若い頃は問題なくスキップフロアを使用できていても、年を重ねると足腰が弱くなり、フロア間の移動が難しくなる場合があります。スキップフロアをご検討される場合は、新しく建てる家でどのように暮らしていきたいかを考えながらプランを練っていく必要があります。
経験豊富な工務店に依頼する
スキップフロアのある家は、一般的な住宅と比べて設計や施工の難易度が高くなります。複雑なデザインであるほど高い技術が必要になるため、希望通りに仕上げてもらうためには、実績と信頼のある工務店に依頼する必要があります。また、デザイン性だけでなく、採光や通風、音やニオイの広がりなど、機能性にも配慮した間取りでプランニングしてもらうようにしましょう。
建築上のルールを事前確認する
スキップフロアのある家を建てる際には、地域の建築ルールについて事前に確認しておく必要があります。その中でも建物の高さ制限は、特に注意すべきポイントです。土地計画で定められた用途地域の中でも、第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域は高さ制限が厳しく、10mまたは12mを超える高さの建物を建築できません。また、先述した通り、固定資産税の対象となるスキップフロアの条件も地域ごとに異なるため、各自治体への確認が欠かせません。
スキップフロアの活用アイデア
スキップフロアの立体的な空間の使い方は、さまざまな用途に役立てることができます。ここでは、便利な活用アイデアについて順番にご紹介していきます。
キッズスペース
スキップフロアは壁で塞がれないため、キッズスペースとする場合は子どもの様子を見守りやすいというメリットがあります。キッチンやリビングに隣接した場所に設ければ、家事と子育ての両立がしやすくなります。また、小上がりにすればお子さんと目線の高さが近くなり、親子のコミュニケーションに良い影響を生むでしょう。
ペットスペース
スキップフロアは、ペットの居場所としてもおすすめです。その中でも、段差の下部を小部屋にする設計は特に人気があります。広すぎず狭すぎない適度な「こもり感」は、ペットたちに安心感をもたらします。奥まった場所に設けることで、ニオイの広がりを防ぐこともできます。また、出入り口の幅や高さをコンパクトにすれば、脱走防止用のフェンスを設けやすくなります。
書斎・ワークスペース
スキップフロアは、書斎やワークスペースにも活用できます。壁で仕切らないため、完全な個室とはなりませんが、家族とほどよい距離感を保ちながら、仕事や作業に集中することができます。子育てをしながら自宅で仕事をされる方にも、おすすめです。スキップフロアの段差はデッドスペースになりがちですが、ワークデスクや本棚といった造作家具を置くことで、無駄なく快適な空間を作れるでしょう。
収納スペース
スキップフロアのデッドスペースを活用するなら、収納もおすすめです。段差が大きければ大きいほど収納力が高まり、空間を無駄なく使うことができます。空間をすっきり見せたい場合は、引き出しなどの「隠す収納」を、デザインのアクセントとする場合は、壁面などに「見せる収納」を設けると良いでしょう。リビングやキッチンなど、隣接する部屋の用途に合わせて日用品を収納しておけば、住宅の利便性がさらに高まります。
寝室
寝室の中にスキップフロアを設けるプランも、人気があります。寝室は静かな環境を確保しやすいため、書斎と兼用される方も多くいらっしゃるでしょう。そのような場合に、ベッドスペースと作業スペースを緩やかに仕切る方法としてスキップフロアが採用されています。用途ごとに空間を区切ることによって、作業と休憩のオンオフを切り替えやすくなるというメリットがあります。
和室
スキップフロアの和室も、よく見られる設計の一つです。洋風建築が主流となった現代の住宅では、和室を作ると家の中でデザインが浮いてしまうことがあります。空間を緩やかにゾーニングできるスキップフロアを取り入れれば、一つの空間の中で、和・洋それぞれのスペースを違和感なく共存させることができます。また、小上がりは昔ながらの日本家屋でもよく見られる造りであるため、和室を作る際におすすめです。
スキップフロアのおしゃれな実例6選
スキップフロアの自由で個性的な設計は、住宅の機能性とデザイン性を高めます。ここでは、おしゃれな実例を6つご紹介していきます。ぜひ、家づくりの参考にしてみてくださいね。
緩やかに仕切られたプレイルーム
ゆったりと食事ができるダイニングと、子どもたちがのびのびと遊べるプレイルーム。スペースを分けたいけど、子どもたちを目の届かない場所で遊ばせるのも心配……。そのような悩みをスキップフロアによって解決した事例がこちらになります。スキップフロアのメリットを生かし、つながりのある一つの空間の中で、それぞれの部屋の機能をしっかりと分けることができました。ダイニングキッチンとプレイルームが一体となっているため、家事をしながら子どもたちの様子を見守ることができます。
和室と洋室が共存するリビング
敷地形状に合わせて、細長いL型に設計された住宅。和室・リビング・ダイニングキッチンをひとつながりにすることで、明るく開放感のある家に仕上がりました。小上がりの和室はリビング横の日当たりの良い場所に配置。床の高さを変えることで、和室とリビングのそれぞれが独立したスペースとして存在しています。しかし、両方の部屋を白くナチュラルな色合いでまとめたり、完全に開け広げられる引き込み戸を採用したりしたことで、空間につながりと一体感をもたらしています。
さまざまな角度から眺めを楽しむ
周辺環境が緑豊かなこちらの住まいでは、美しい自然の眺めを室内にいかに取り込めるかが設計のポイントとなったそうです。そのために庭に面して大開口を設けて内と外の境界を曖昧にし、広がりのあるリビングを演出しました。また、このリビングの上部にはスキップフロアを設けていて、大きな高窓から景色を見渡すことができます。高さの異なるフロアを複数設けているため、さまざまな角度から眺めを楽しむことができます。
家族を感じながら過ごせる書斎
こちらは、40帖もの広さを持つLDK。窓は大開口、天井は吹き抜けになっており、ダイナミックな造りとなっています。リビング階段を上がった先にあるスキップフロアは、オーナー様の書斎となっています。空間を完全に塞いでいないため、リビングにいる家族をそばで感じながら仕事に取り組むことができます。また、スキップフロアに取り付けられたフェンスは、透過性のある素材で、黒く色付けられています。リビングの様子を見守ることができる一方、書斎側のプライバシーも確保でき、家族の適度な距離感を守ります。
開放的な設計でLDK空間を明るく
空間を立体的に使うスキップフロアは、空間を縦方向に広げる吹き抜けとの相性が抜群。この二つを組み合わせることで、明るく開放的なLDKに仕上がっています。スキップフロアは間仕切りを使わない設計であるため、天窓から差し込む光を妨げることなく、空間全体に明るさをもたらしています。また、スキップフロアの踊り場から吹き抜けの天井にかけて、壁一面に本棚を造作しています。スキップフロアに腰をかければ、柔らかな光に包まれながら、ゆったりとした読書の時間を楽しむことができるでしょう。
水回りを中二階に集約
こちらの事例では、高低差のある敷地を生かしてスキップフロアを計画しました。LDKから半階上がった先にスキップフロアを設け、その場所に水回りの機能をまとめています。床の高さを変えることで水回りとの適度な距離感が生まれ、生活感を感じさせにくい、おしゃれなLDK空間を作っています。また、スキップフロアの下は小部屋を設け、パントリーとして活用しています。キッチンに隣接しているため使い勝手が良く、食品やキッチン用品をたっぷりと収納することができます。
まとめ
スキップフロアの立体的な構造は、住宅の機能性とデザイン性を高め、実例でご紹介したようにさまざまな用途に役立てることができるでしょう。ただし、構造が独特であるため、施工の際には地域の建築ルールの確認や、信頼できる工務店への依頼が重要となります。今回ご紹介した内容を参考に、スキップフロアでユニークかつ快適な暮らしを叶えてみてくださいね。