デザインで遊び、色を楽しむアーティスティックな住宅
デザインで遊び、色を楽しむアーティスティックな住宅
好きなアイテムを集め玉手箱のような空間に
静岡県・熱海の海が一望できる高台の家。1階の家族用リビングを抜けて2階に上がると、そこには個人宅とは思えないほどの開放的な大空間が広がっている。これはゲストと過ごすための専用のパーティルーム。「友人が泊まりがけで遊びに来たくなる家にしたかったんです」とNさん。その規模と、露天風呂スタイルの天然温泉など旅館にも引けを取らない設備に驚く。パーティルームの海側に開けた南東の2面はすべて開口部で、天井高は最大4.2m。SE構法だからこそ実現した大開口から素晴らしい眺望が楽しめる。また、この大空間にはたくさんのカラフルなデザイン家具が置かれ、海を望むギャラリーのよう。眺めが良く落ち着けるこの場所は、パーティだけでなく、普段から家族の寛ぎの場にもなっているという。
ポップでモダンな家具やライトは、ご夫妻が自ら選択した。アートやデザインに囲まれて暮らすことをコンセプトに、常識や予算にとらわれず、自分たちの好きなものを好きなだけ自由に取り入れようと決めたそう。2階のホームバーにはデンマークのデザイナー、ルイーズ・キャンベルの名作「LCシャッターズ」のライトを2つ。この「重ねづけ」が過剰にならず、絶妙なバランスで輝くのは、ご夫妻のセンスはもちろん、大空間だからこそ。「こんな合わせ方は仕事ではなかなかできませんが、自宅でなら試せます。窓際の丸テーブルは、個性的なイームズのパッチワークチェアを4脚置いてコーディネイトしました」とNさん。その分、バーカウンターは業務用のステンレスユニットのキッチン、ストック用の棚は無印良品にするなど、無機質でミニマムなデザインを選んだ。「構造部分や梁をそのまま見せることで、ホームバーやリビング、書斎などそれぞれのコーナーをゆるやかに区切りました」とNさん。個性的なデザイン家具があふれ、さまざまな要素が混在しつつも、調和した空間づくりに成功している。
カラーリングの力で各部屋の個性を際立たせる
家具と同様、独創的な空間づくりのカギとなっているのが壁の色だ。各部屋の一面だけを強い色にして、それぞれの個性を出した。これまでさまざまな別荘や店舗を施工してきた梅原建設の池上一敏さんも当初は戸惑ったという。「今までに使ったことのないビビッドなカラーばかりで、塗る前に『本当にこの色でいいんですね?』と思わず確認しました」と振り返る。しかし完成後には、伊豆の豊かな自然ややわらかく差し込む陽光に、明るい色がよく映えることに驚いたという。
色には気持ちを高揚させたり、落ち着かせたりする効果がある。「2面が開口であるということは、外の風景に気分が左右されるということ。雨の日も青空を感じられるよう、バーカウンターの壁は鮮やかなブルーにしました」とNさん。逆に1階のリビングには落ち着いた赤紫、モーブを選択。強い色に感じるが、実は気持ちを和らげてくれる色だという。また、家族で使う1階はより落ち着ける場所となるよう、2階よりワントーン明度を落とした。
ホスピタリティあふれる家は家族にやさしい家でもある
都心で暮らしていたNさんが熱海に移り住んだのは約1年前。「浜松での仕事が多く、毎週行き来していたので、東京と浜松の中間を選びました」とNさん。奥さまは東京のオフィスに通っているが、新幹線の駅に近く、品川まで片道約40分なので、通勤は苦にならない。毎日、温泉と相模湾の海鮮を楽しみ、週末は友達を招いてリフレッシュできる。そして何よりも庭で愛犬が一年中駆け回れるのは、温暖な熱海だからこそ。熱海に移住し、日々の生活が豊かになったという。ゲストをもてなすために工夫を凝らした邸宅は、家族の普通の日常をも心躍るものに変えてくれた。
取材・文 間庭 典子
N邸
設計 | 池上一敏(梅原建設) | 施工 | 梅原建設 |
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所在地 | 静岡県熱海市 | 家族構成 | 夫婦+愛犬 |
延床面積 | 194.14㎡ | 構造・構法 | SE構法 |