憧れの地下室を注文住宅で実現するために、知っておきたい6つのポイント
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地下室という言葉に、どのようなイメージをお持ちでしょうか。暗くジメジメとしたものでしょうか。それとも、楽器などを楽しむためのエリアというプラスのイメージでしょうか。いずれにせよ、地下室は床面積を広げるという大きな利点があります。
快適な地下室のつくり方や費用の問題など、事前に知っておきたいことをご説明します。
1.地下室で「楽しめること」6選
地下室は、土中にあり、周囲をコンクリートで囲まれているという特性から、色々な楽しみ方ができる場所です。あなたは次のどれに関心がありますか。
1-1.シアタールーム
時間がなく、なかなか映画館に足を運ぶことができないという方にとって、自宅でのDVD鑑賞が唯一の楽しみかもしれません。テレビで見る映画はどうしてもスケール感が乏しくなりがちですので、「大きなスクリーン・大音量で映画を観たい」というとき、音を外部に漏らすことの少ない地下室が力強い味方となってくれます。
1-2.音楽スタジオ
楽器演奏が趣味、もしくはお仕事である方にとって、楽器の持ち運びをせずに自宅で楽しめるのは夢ではないでしょうか。重量があり持ち運びが大変、もしくは持ち運びそのものができない楽器の場合は特にそう思われるでしょう。
楽器の練習(レッスン)は、小さな音で満足できるものではありません。適切な音量に耐えられる部屋があってこそ、楽器そのものの音色や音の強弱を楽しめるものです。
1-3.ワインセラー
ワインを楽しむ方にとっての憧れは、ワインセラーです。冷蔵庫タイプのワインセラーも販売されていますが、それでは物足りない、多い本数を保有していたい方にとっても、地下室は魅力的です。
特に長期熟成するタイプのワインは年間を通して15度前後・70%前後の冷暗所での保存が望ましいとされていますので、地下室は最適です。
1-4.創作活動やスポーツを楽しむ場所
絵や彫刻、手芸やプラモデルを楽しむ創作の場が欲しいという方にも地下室は人気です。道具や材料を大量にストックしておかなければなりませんし、外部の視線が気にならない静かな環境を確保するために地下室はとても便利です。
また地下室では、集中して思い切り体を動かすことができるので、ゴルフ練習やジムなど、スポーツをする場所としても最適です。様々な趣味を楽しめる空間と言えるでしょう。
1-5.在宅勤務のワークスペース
地下室は、地上階と比較すると外部からの騒音が入りにくく、静かで集中しやすい環境を作りやすいため、在宅勤務のワークスペースとして活用することもできます。また、他の家族や来客などからも物理的に距離があるため、プライバシーの確保もしやすく、作業の邪魔をされる心配も少ないでしょう。仕事で使う資料や書籍なども、壁面に書棚を作ることで、本の重量を気にせずに増やしていけます。
一方で、計画の仕方によっては、窓を設置するのが難しく採光や換気が十分にできないこともありますので、換気扇や照明などで工夫するようにしましょう。
1-6.子供の遊び場
地下室は外部から遮断されているので、子供が大騒ぎしても、声や足音などが近隣の住宅へ響きづらくなるので、子供の遊び場としてもメリットがありますね。
また、雨が降ったり、冬の気温が低い時など、外で遊ぶことが出来ない時にも、子供たちが退屈しない遊び場として活用できます。ただ、地下室は通常鉄筋コンクリートで作るので、内装材に気を付けて怪我のないように工夫しましょう。
2.地下室のメリット
地下室を作る事には、毎日の暮らしの中でたくさんのメリットがあります。自分たちの暮らしを振り返りながら、または理想の暮らしを想像しながら、これらのメリットについて考えてみましょう。暮らしがより豊かになると思えば、地下室の設置を検討してみてもいいですよね。
2-1.災害時にはシェルターにもなる
実際に起こることを想像したくはありませんが、世界の状況を見るとJアラートなどが発動されることもあり、将来的に何が起こるのかというのは誰にも分かりません。起こる確率は低いかもしれませんが、万が一のそういった緊急警報があった時にも、地下室があると安心です。
地下室が災害時のシェルターとして機能するためには、安全性、快適性、備蓄の充実などが重要です。計画的かつ適切な準備を行うことで、家族の安全を確保できる避難施設となるでしょう。
2-2.気温や湿度が安定している
地下室は地下にもぐっているため、外部の気温変化の影響を受けにくく、季節ごとの気温の変化が穏やかで、寒暖差が生まれにくい環境です。夏は外部の高温から遮られ、冬には外部の寒さを遮断しやすいため、エアコンの使用を最小限に抑えることができるでしょう。
土の中に位置する地下室は、地中の土が湿度を一定に保つ働きがある為、室内の湿度も比較的安定しやすいと言えます。湿度が安定しているとカビなどの心配も少ないので、貴重品やシーズンオフの物も安心して収納できますね。
2-3.地震に備えられる
地震による建物の揺れは、地盤の揺れと建物の揺れの周期が違うために発生します。そのため、地盤と共に建物が揺れる地下室は、地震時の揺れにもあまり影響を受けないので、一時的に避難する場所としては、地上よりは安全と言えます。
自宅地下室での避難生活は、集団での避難生活と比べると、そのストレスは小さくなると言えるのではないでしょうか。地下室に避難することを考えて、食料、水、医薬品関連の備蓄品や通信機器、携帯電話の充電器などを収納できるように、地下室内にスペースを確保するといいでしょう。
3.地下室にまつわる心配事は何?
住宅の下部に埋め込むように形作る地下室は、いくつかの面でのデメリットがあります。憧れの地下室を検討する前に、その「気になること」を理解しておきましょう。
3-1.建築費用のこと
地下室は限られた土地の中に有効な空間を作ることが出来るという素晴らしいメリットもあるのですが、やはり気になることの一つに費用があります。地上にだけ家を建てる場合とどれぐらい違うのか見てみましょう。まずは地中に空間を作るには土を掘ることが必要です。この土を掘るという作業には、重機が必要ですし、取り除いた土を捨てる費用も必要です。
さらに、設計における構造計算でも地下部分が増えます。また、地上部分は木造であっても地下の構造体は鉄筋コンクリート造でなければならないので、その分の材料費も増えます。もうひとつ、地下には水分が含まれていますので、湿気対策や防水の為の特別な処置も必要になってきます。こういった工程を加算していくと地下室だけで1坪あたり50万円程度上乗せの費用がかかりますし、もしも地盤が弱い場合は補強するための費用も上乗せしなければなりません。
3-2.湿気がこもりやすい
土に埋まった状態で温度が一定の地下室は、特に夏場に結露しやすいという特徴を持っています。夏の湿った空気が入り込むと、外気温よりも低い地下室では水蒸気が飽和してしまい、結露するのです。さらに、コンクリートが完全に水分を放出してしまうまでの数年の間はこの傾向が強く出ますので、かび臭さを招いてしまうことがあります。
これを解消するため、あらかじめ換気システムや除湿システムをしっかり整えておきましょう。家電量販店で売っているようなものではなく、家の設備として設置できるものが好ましいです。また、可能であれば排水の設備まで整えておくとより安心できます。
4.快適な地下室のつくり方・注意点
メリット・デメリットを比較してもなお、地下室が欲しい、という方はどのようなことに気をつければよいのでしょうか。
地下室には大きく分けて三つのタイプがあります。まずは、全部が地下に埋まっている「全地下」タイプです。窓などがつけられないので居室ではなく、納戸や物置などの大きな空間が欲しい場合にはこのタイプがいいでしょう。
次に半地下タイプ。これは、地下室の部分の3分の1が地下に埋まっているタイプです。地上部分に面している部分があるので、換気や採光の部分でもメリットがあります。
最後に、ドライエリアがあるタイプです。このタイプは地下に外部空間を作ることで通風と採光を確保することが出来るので、リビングや寝室などを計画することも可能です。ではこれらのタイプ別に注意する点などを見ていきましょう。
4-1.湿度調節と日当たりの確保
地下室の環境を快適に保つため、湿度調整や日当たりの確保は大事なポイントです。これを行ってくれるのがドライエリアです。
ドライエリアとは、地下室と地面の間に設ける「空堀り(からぼり)」のことを指します。適切にドライエリアを設け、空気を入れ替えできる窓を設置すれば、過剰な湿気を逃がしながら太陽光を取り入れることができますので、「暗い・ジメジメしている」というイメージとはまったく別の地下室を作ることができます。
4-2.避難経路の確保
地下室と1階部分をつないでいるのは基本的に室内階段だけです。しかし、これでは火事や地震などで避難経路がなくなってしまうことも考えられとても危険です。この問題もまた、地下室にドライエリアとドアを設けることで解消することができます。ドライエリアには地上に上がるための階段を設けることも大切です。
4-3.ドライエリアに鉢物のグリーンを置くと見た目にも快適
換気や日当たり確保、避難経路確保のために設けるドライエリアも、鉢物やプランターで植物を育てれば見た目にも快適でさわやかな空間となります。コンクリート打ちっぱなしでつくることも多い地下室ですが、このような工夫で季節を感じながら過ごすこともできます。
ある程度の広さのドライエリアをつくることができるのであれば、ガーデンテーブル・ガーデンチェアを置けば、もう一つの庭を持つこともできます。そこは地下ですから、人目に触れることもほとんどありませんので、ゆっくりとティータイムやランチタイムを楽しむこともできるでしょう。
4-4.ドライエリアを設けるのなら、雨水対策も必須
地下室は文字通り地面より下にありますので、そこにドライエリアという空間を設けることを検討するのであれば、近年よく話題に上がる「ゲリラ豪雨」に対する備えをしなければなりません。
大雨が降った日に、地下鉄の駅が封鎖される風景をニュースなどでご覧になったことがあるでしょう。あのようなことが自宅で起きないようにするためには、ドライエリアの手すり(コンクリート)をある程度の高さにまで上げておかなければなりません。お住まいの地域、もしくは家を建てようと思われているエリアのハザードマップをご覧になったことがあるでしょうか。洪水が起きたときに予想される水位を確認しておく必要があるでしょう。
5.地下室は部屋なの? 容積率に影響はあるの?
地下室は、基本的に「居室」としては認められていません。居室ではないとなると、サービスルーム(納戸)としての扱いにしかなりません。つまり、「人が常にいると想定されない部屋」でしかないのです。この問題を解消するためにも上記でご説明したドライエリアが有効です。ドライエリアを建築基準法の規定を満たすように設けることで「居室」とすることができるのです。
では、家を建てる際に気になる容積率への影響はどうでしょうか。ある一定の基準を満たせば、地下室は容積率に算入しなくてもよいとされています。
・地階(地下室)の床から地盤までの高さが、その階の天井の高さの3分の1以上
・天井が地盤から1メートル以下
・住宅の用途に供するもので、同建築物の床面積合計の3分の1以下
これらを考えると、容積率の制限が厳しいエリアで満足の行く広さを求めたいのであれば、居室に適合する設備を整えた地下室を設けるのも一つの方法として検討できることがわかります。
6. 理想の地下室を実現するための、8つの実例集
地下室のある家は、まるで「大人の隠れ家」のようでワクワクするものです。しかし、その特殊性から気をつけるべきポイントは多岐にわたります。費用の問題、ドライエリアに求めるべき機能などを考えてもやはり地下室は魅力的です。
地下室という言葉のイメージを覆す、明るく機能的な家の実例をご覧になってください。地下の和室や寝室など、驚くほど自由につくれることをご理解いただけるでしょう。
6-1.階段上部から降り注ぐ陽光で、明るく多目的に使える地下室
スポーツや音楽にと幅広く使う事を想定して作られた地下室。これだけの大空間ですから、何をするにも広々と活動できそうです。床のフローリングが足に優しいですね。また地下であることで音を出しても周りへの音漏れの心配も少ないのがメリットです。また階段上部から自然光が入ってくるので明るさもキープ出来ますね。
6-2.温度が安定している地下室にこそワインセラーを
地下室のメリットの一つに温度が安定していることが挙げられます。ヨーロッパなどでは一戸建てのおうちには必ずと言っていいほど地下室があり、そこにはワインや食料のストックや庭仕事の道具などを収納する場所として利用しているのをよく見かけます。こちらの例はその現代版と言ったところでしょうか。お洒落なレストランのワイン貯蔵庫のようなインテリアで、入るだけで気持ちが高揚してきそうですね。
6-3.ドライエリアを設ければ、採光も通気も確保した快適空間に
地下室を作る際に、こちらの実例のようにドライエリアを作れば、まるで地上階のように自然光を感じることができ、換気性能の上でも自然換気がしやすくなり、空間としての快適性もあがります。しかも地下であることで地上のように周囲の騒音に悩まされることもありません。このドライエリアタイプの地下室は地上と地下のいいとこどりのようなプランと言えますね。
6-4.地下に玄関という、空間の有効活用
地下二階に玄関があるというこちらの住宅。玄関は長く人が過ごす場所ではありませんから、限られた空間の中で地下に玄関を持ってくれば、他の空間を明るい地上階に持ってくることが出来て、全体としての空間を有効活用できますね。地下でありながらも、上階からの光が階段を通して降りて来るので柔らかい自然光を感じる、落ち着いた空間になっています。
6-5.ギターを楽しめる地下室の防音スタジオ
ご主人の趣味のギターを楽しめるように、完全防音仕様のスタジオを地下に作りました。友人たちを呼んでのバンドの練習が、気兼ねなく出来るようになったという事です。
カウンターもありますので、バーとしてお酒やおつまみを楽しんだり、録音した音楽をPCで編集する際には、作業デスクとしても活用が出来るでしょう。また、プロジェクターも設置してありますので、ホームシアターとして音の大きさなど気にせず、家族で映画鑑賞も楽しめますね。
6-6.地下室に設けたスタイリッシュなシアタールーム
巨大なスクリーンに映し出された映像を見ながら、映画鑑賞を楽しむことができるこちらのシアタールーム。まるで映画館のような迫力がありながらも、完全なるプライベートルームです。
地下に位置する空間ですので、周りの目や時間帯を気にすることなく、深夜でも早朝でも、自分の見たい映像を好きなだけ楽しめる空間です。プライベートシアタールームのメリットは、好きな時にトイレに立ったり、好きなドリンクを飲んだり、食べ物も自由に選べるという事もありますね。
6-7.秘密基地のような地下室のプレイスペース
こちらの事例では、お父さんはトレーニングマシンを使って筋トレ、お母さんは趣味の楽器を弾いて、子供は友達を呼んで遊ぶというように、家族全員で地下室ライフを楽しんでいます。地下室のレイアウトや内装は、用途を限定せず、様々な希望に対応できるように出来るだけシンプルにしたという事です。
地下室でのレクレーションの為に、必要なものをスッキリと収納できるクローゼットも完備して、増えていくモノにも対応しています。
6-8.温かみを感じられる地下の和室
こちらの事例では、和室を地下に配置しました。和室は日本人であれば、家づくりには取り入れたい要素ではありますが、スペースの都合上どうしても取り入れられないこともあります。そんな場合でも、地下室を作り、地下に空間の余裕を持たせれば、和室を設けることができますね。
普段はあまり使うことがなくとも、客間としても重宝するでしょう。お正月や日本の季節行事等の際には、やはり和室で時間を過ごすことが、子供の教育上にもメリットがあると言えるのではないでしょうか。
まとめ
地下室という空間の有効活用法、いかがでしたでしょうか。土地が充分にに広いという場所では特に必要ないかもしれませんが、都心などの限られた土地の中でなんとか居住スペースと収納スペースを確保したいと思っていらっしゃる方にはとても魅力的な解の一つと言えるのではないでしょうか。今回ご紹介したメリットやデメリットを頭に入れつつ、建築のプロと一緒に相談しながら素敵な空間を作っていきましょう。